<拉致被害者帰国10年>
今年の10月15日で、北朝鮮による拉致被害者の蓮池薫さん、曽我ひとみさんら5人が日本に帰国して10年が経つ。蓮池さん夫妻の子女らと曽我さんの米国人夫ら8人が帰国したことを除けば、横田めぐみさんら拉致被害者の奪還はまったく進んでいないのが現状だ。
現在の日本政府(民主党政権)の拉致事件への対応を見るにつけ、真剣に解決に向けての取り組みをしているとは到底思えない。
衆議院の任期が1年を切るなか、国会議員としての身分を守る(選挙)ことだけしか頭になく、拉致事件の解決など上の空なのか。
<拉致事件を把握していた日本政府>
日本政府(自民党政権)は、韓国に亡命した北朝鮮の工作員、大韓航空機爆破事件の金賢姫(キム・ヒョンヒ)、日航機「よど号」乗っ取り犯グループの元妻の証言などにより、北朝鮮による日本人拉致の疑いが濃厚になってからも、日朝国交正常化交渉の障害になるということで、拉致事件の解決に積極的には取り組んでこなかった。
本来、北朝鮮が日本人拉致を認める前であっても、様々な状況証拠や証言により、拉致をされたことは疑いのないことであった。裏を返せば、日本という国家が、自国民の「生命・財産・人権・自由」を守る責任を放棄してきたとも言える。
拉致された人たちは紛れもない日本国民である。日本政府は憲法によって、国民を守るための最大限の努力をすると定められている。
同じようなことが、アメリカ人を襲ったとしたら、アメリカ政府ならただちに特殊部隊を送り、実力行使で自国民を奪還するだろう。
日本政府も陸上自衛隊の特殊作戦群の隊員を北朝鮮に送りこんで、拉致被害者を奪還することを検討するべきではないのか。主権国家ならば。
外務省の槙田邦彦アジア太平洋州局長(当時)などは、「日本政府が拉致と認めているたった10人のことで、日朝交渉に障害が出ては困る」と公の場で発言したことがある。この暴言を聞く限り、どこの国の外務官僚かと疑いたくなる始末だ。
社民党などは日本人拉致を北朝鮮が公式に認めてからも、まだ北朝鮮に対し配慮をしている。いったいどこの国の政党かと問いたい。
政治家、官僚も、自分の身内が拉致されていたら、拉致事件に対する対応も違ってくるのかもしれない。情けない限りである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第3版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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