愛のある教育を行なっているだろうか。日々、自問自答する。私の考える愛のある教育とは、その人の歩んできた人生という歴史と個性を尊重した教育、ビジョンと綿密なプランのある教育だ。愛のない教育は、信頼関係を致命的に破壊する。選択理論心理学は、要約すると「人は外的コントロールではなく遺伝子に組み込まれた内的欲求によって行動を選択する」と説明する。「ゆとり教育」の正と負。その「正」として評価したいのは外的コントロールを避け内的欲求と個性を尊重したところだ。
しかし、現場の教育体制が整っていなかったことで問題が顕在化した。経済産業省では若者に不足しており習得してほしい社会人基礎力としてチームで働く力、考え抜く力、前に踏み出す力を挙げている。ゆとり教育の「負」だ。私の教育方針は、短期で「正」を伸ばして中長期で「負」を補う方式をとる。たとえば新入社員教育では6カ月間はまず個性を生かして長所を伸ばすことで短期的な成果を出す。その後、短所を補うことで2~3年で「自立して稼げる人財」に育成する。
「正」すなわちイマドキの若者の個性とは・・・。
1.協調性が高くチームで作業をすることでモチベートされやすい傾向
2.好奇心が旺盛で多様な業務に対応することができる傾向
3.合理的にものごとを考え、価値や妥当性について正しく判断することができる傾向
「競争」「我慢」「行動」に課題を抱えている若者は多いが、視点を変えて個性に愛情を注いでほしい。すると、イマドキの若者が頼もしく見えてくる。
「福岡県新卒者就職応援事業」について紹介したい。この事業では、学校を卒業して3年未満の未就職者を対象に就職支援を行なっており、概要は、事前研修5日間ほど実施後に職場を7週間体験してもらう、というものだ。(株)TNCプロジェクトと弊社(総合教育社アシスト)が共同開発したカリキュラムでは、事前研修5日間で変化を遂げるケースが少なくない。「協調性」「好奇心」「合理的」という3つの個性を生かしているからだ。
初日は1日かけて研修の目的と理屈と目指すゴールを徹底的に議論し「合理的」であることの合意を得る。 その後はグループワークやビジネスゲームの割合がおよそ6割を占める。参加者の「協調性」に期待した設定だ。そして、心理テストや人生の成功法、マネープランなど「好奇心」をそそる多様な授業を行なう。演技力養成「楽しいバナナ」ゲームでは、「楽しい」「悲しい」などの感情を体・表情・声を使って表現する。楽しそうに「バナナ!」悲しそうに「パイナップル・・」などなど。ゲーム好きの彼らからは「あれで吹っ切れました」「やる気のスイッチが入りました」などと高評価。最終日に行なう「接客ロールプレイング」などを契機に、事務職を希望していた受講生が営業や販売職で就職決定するなどの成果が出ている。
このように短期的には若者の個性を生かす教育が功を奏する。
本稿を執筆した小路智広氏が、11月8日に、経営者や人事教育担当者向けの人材育成に関するセミナーを開催します。詳しくはコチラ。
<プロフィール>
小路 智広 (こみち ともひろ)
炎の教育探求家(学習塾講師時代に同僚が命名した)自身が大学生のとき、腎臓病の完全克服を期して自転車による九州一周の旅を敢行するなど、一徹な面と寛容な面を併せ持つ。これまで学習塾における学生教育・受験指導・教室経営、大学生をはじめとした若者の就職支援及び中高年層の転職支援、そして、企業における社員教育研修を行なってきた。
講義・講演数36,000回。指導者数はのべ35万人以上と九州でNO.1,日本でも有数の実績を誇る。大学教員として5年間「キャリア開発学演習」の教鞭をとっていた2007年には、「これからの働き方」をテーマに日本全国47都道府県を51日間で一周し取材を行った。8年間教鞭をとっている九州大学自己表現能力育成プログラムでは「愛と人生」をベースにした講義で人気が高く、これまで1,000名以上が受講している。
▼関連リンク
・【11/8、IB会員無料】イマドキの若者を『人財』に変える新時代の人材育成法を伝授!~講師は炎の教育探求家・小路智広氏
※記事へのご意見はこちら