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原発維持・容認でほくそ笑む国家戦略室「Kチーム」(後)
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2012年10月19日 10:00

<"世論誘導"受注は博報堂>
sora_24.jpg そんな古川をトップとするエネ環会議が提起したのは、周知のように原発比率ゼロ、15%、25~30%の3案を示し、それを全国各地での意見聴取会や討論会という大イベントによって国民の意見を集約しようという試みだった。「幅広く国民の声を聴く」といえば聞こえはいいが、「決められない政治からの脱却」を謳いながら「決めない」「決められない」野田政治の面目躍如。世論にゲタを預けながらいかに原発容認路線を維持するかに本音があるのは、陰の総理を自認する仙谷由人(前政調副会長)の「再稼働しなければ日本は集団自殺」発言や鳩山、菅ともども原発の海外売り込みに熱心だったことでも明々白々。睨んだ通り、一連のイベントによる世論調査の手法はスタンフォード大学など米国の大学で研究されてきた「典型的な世論誘導、世論形成の手法」(米国留学経験のある元キャリア官僚)で、いかにも古川好みのやり方である。それを受注したのは博報堂。電通とともに原発推進の政府広報を一手に引き受けるムラの一員だ。

 しかし、問題は内閣官房に事務局を置く国家戦略室の素性だ。「実は国家戦略室そのものが組織として怪しいんですよ。小泉内閣時代の経済財政諮問会議が法的根拠をもつ組織として機能していたのに対し、それに替わるものとして民主党が鳴り物入りで発足させたものの、設置法は審議先送りになったままなのです」というのは、内閣官房や内閣府に在籍経験のあるキャリア官僚A氏。すなわち戦略室が何かをまとめたところでそれに法的根拠はないことになる。外交から内政まで多岐にわたるテーマを扱うため、スタッフはそれぞれの省庁からキャリアが送り込まれているが、本籍は出身省庁にあるから省益優先で動くうえ、他省庁の分野には一切口をはさまないという。

<踊った古川大臣 振り付けた今井、日下部審議官>
 当然ながらエネルギー問題は経産省の独壇場。大任に張り切る古川に経産省が張り付けたのが、戦略室で『Kチーム』とよばれる今井尚哉、日下部聡の二人の内閣官房審議官。「彼らが大臣の補佐としてすべてを仕切り、2人以外は誰も大臣にアクセスできないといわれていました。彼らの振り付けで舞台で踊ったのが古川大臣という図式です」(内閣府担当記者)。原発維持、容認の落としどころを探る3案提示の大イベントも、発注主体について当のエネ環会議事務局は「資源エネルギー庁に聞いてほしい」と当事者意識ゼロ。調べると調達したのはエネ庁の総合政策課。しかも事業名の冒頭に「電源立地推進調整等予算」とあり、仕掛け人は原発推進、維持を狙う経産省そのものである。

 ただ世論の大勢は当然ながら「原発ゼロ」で、9月の意見集約を前に古川や枝野経産大臣ら「エエカッコしい派がゼロに傾斜、民主党内も割れた」(内閣官房担当記者)が、結果は当初の「2030年」が「年代」に後退したものの、野田内閣としては「ゼロ」の看板を掲げることになった。もっともその実態は、推進、維持派の攻勢に後退に後退を重ねて脱原発世論のガス抜きにもなっていない。まず何よりも9月14日の閣議決定を見送った結果、「怪しい組織・国家戦略室」がつくったシナリオの有効性が問われる。しかも中身は各メディアも口を揃えて批判するように矛盾だらけ。急所の核燃サイクルの中止を先送りし、稼働40年での廃炉も見直しの余地を残し、新規増設の中止も工事中のそれは容認しかねない。となれば何十年先も原発は動き続ける。ゼロ政策をめぐる一連の大騒動も経産省の思惑通りに終わりそうだ。(敬称略)

(了)

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<プロフィール>
恩田 勝亘(おんだ・かつのぶ)
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経 済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書 館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するも の』(主婦の友社―共著)など。


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