<急速に冷え込む日中情勢を静観するアメリカ>
国吉 南沙諸島の問題など、アメリカと中国の間でも領土問題は起きていますが、アメリカ軍部では、日中がいがみあっているのを口実に、日米安保の強化やオスプレイの配備など、どさくさにまぎれて軍事力を増強する動きが出てきています。アメリカ政府の中でも今回の事態を煽っている人物もいるようです。
中山 アヘン戦争からずっと中国は、日本や欧米諸国に支配され続けてきました。そのなかでも、「反欧米感情」がなかなか出てこないのには理由があります。古代の中国では「朝貢貿易」といって、周辺国は中国に貢ぎ物をしてまで、貿易をさせてもらっていたという時代がありました。中国国民にはその考え方が根強く残っていて、日本も同様、近隣の国々に対して、「格下」という意識が強いのかもしれません。一方で、アメリカにはまだまだ憧れ意識があるのも事実です。ヨーロッパは距離が遠いこともあり、関心が薄いようです。日本の田中角栄首相(当時)もアメリカのニクソン大統領(当時)も国交回復の調印の際には、自国に呼び寄せるのではなく、北京を訪れました。日本もアメリカも無意識のうちに一目置いてしまう、中国はそんな国なのです。
<「反日」は諸刃の剣に>
中山 反日感情を抱いているのは、何も中国だけではありません。ミャンマーでもタイでもフィリピンでも反日感情を抱いている国民は大勢います。ただ、中国は「愛国」という名のもと、反日教育をやっています。ほとんどのデモは貧困などに起因するものですが、中国だけは、政権維持のために反日教育を植え付けていることに起因しているのです。「愛国無罪」という思想は、これまで外交のカードとして機能してきましたが、ここにきて「諸刃の剣」になろうとしています。今まではマスコミを統制しさえすれば、政府の考えを植え付けることができましたが、誰でも情報を入手できるインターネット社会では、政府がコントロールできなくなりました。「反日」を掲げれば、国民の「ガス抜き」ができた時代は完全に終わりました。
今後は「親日ではない」彼らとどううまく付き合っていくかを真剣に考える必要があります。政治のリスクを常に念頭に置き、生産の一部を移転することや、香港や台湾の活用、独資でやることなど、あらゆるリスクマネジメントを考える必要に迫られています。
国吉 日本の企業が中国でビジネスするのは「十字架を背負うこと」と言われています。中国人は「あやふやな態度」の人にはつけ込んできます。しかし、人と人との関係を重要視する国民性でもあります。過去の歴史を理解したうえで、何も起きていない平常時から、人脈や人間関係をつくっていかないといけません。政府を敵に回すのではなく、政府とともにこの事態をどう乗り切るか、中国人と日本人スタッフも一致団結すべき時が来ているのです。
一般社団法人九州・アジアビジネス連携協議会では、中小企業経営者や幹部向けに「実践アジア社長塾」を毎年開催しています。8日間にわたって中国ビジネスの基礎知識を頭に入れることで、アジアに進出できる態勢を整えていきます。現場は刻一刻と変わっていきますが、基礎的なことを学んでいなければ、対中ビジネスは通用しません。今回のような事態でも動揺しないよう、企業経営者には、あらゆる見識を身につけてもらえたらと思います。
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