連載の最終回になるので、ここまで曖昧に表現してきた事柄を明確にして、私が真実だと考えるところをお伝えしておきたい。それは、「教育マネジメントの場合、教育管理する立場にある人が問題を抱えている」(W.グラッサー著「クォリティ・スクール」より引用)という真実だ。
一般的に企業内ではイマドキの若者が問題視されているわけだが、私の25年間の教育研究の結果、現実には教育管理者の若者理解・コミュニケーション・指導法・教育プラン・評価(人事評価制度を含む)が不十分であることが、若者を育成できない根本原因である、という結論に至っている。つまり、私が提言したい新時代の『人財』育成法とは、教育管理者自身が変わることだ。
10年ほど前から私の教育ベースにある理論は、ウィリアム・グラッサー博士の選択理論心理学およびクォリティ・スクール(上質教育)だ。この考え方と教育法に出会う前までは、学生理解も乏しく失敗の連続であった。15年前の1997年7月に総合進学塾Kゼミナールを設立し、塾生数は13名からスタートして2年後には100名を超えていた。ところが5年目の11月に廃校に追い込まれた。そのすべての原因は、塾生の変化に気づかず学生理解をはじめとした相手を思いやる対応を怠った私自身にある。
では、「人財」育成に成功している企業ではどうか? まずはリッツ・カールトンのサービス哲学にある「内部顧客」という考え方を紹介したい。リッツ・カールトン・ホテルに宿泊すると毎回嬉しい驚きがある。たとえば2回目の宿泊チェックイン時に、「本日もウェルカムドリンクは温かいカモミールか何かをお持ちいたしましょうか」と感動のおもてなしが始まるのだ。リッツ・カールトンのサービス哲学は、従業員を「内部顧客」と呼び、同じ目線でお互いを理解し合い心から尊敬しあうこと。従業員もお客様として扱われ、誇りと喜びを持って働いている。
次にスターバックスでは、従業員を「パートナー」と呼び、一人ひとりの多様な考え方を尊重し自主性の芽を育てていく「コーチング」の思想が根底にある。社員に求められるのは「オーナーシップ」だ。自分で自分のキャリアに責任をもって自分で動くという考え方があり、「キャリアチャレンジプログラム」を導入している。スタバの従業員の無駄のない動き。行き届いた接客。私がぎっくり腰のため杖をついて入店した際、「どうぞ掛けられて下さい。席までお持ちいたしますので」と優しく接してくれた天使のような笑顔は今でも忘れられない。
このように「人財」育成に成功している企業に共通していることは次の3つにまとめられる。
(1)従業員理解に努め顧客やパートナーと接するようにコミュニケーションしている。
(2)個性や自主性を引き出すコーチング型指導を行なっている。
(3)従業員の人生に価値ある教育プランとキャリアを支援する評価制度が充実している。
若者を大切に育てたい。若者を大切に育ててほしい。私たちの国は、皆さんの会社は「財の山」なのだ。ウォルト・ディズニー氏はこう語っている。「人は誰でも世界中でもっとも素晴らしい場所を夢に見、想像し、デザインし、建設することができる。しかし、その夢を現実のものとするのは、人である」。
≪ (4) |
本稿を執筆した小路智広氏が、11月8日に、経営者や人事教育担当者向けの人材育成に関するセミナーを開催します。詳しくはコチラ。
<プロフィール>
小路 智広 (こみち ともひろ)
炎の教育探求家(学習塾講師時代に同僚が命名した)自身が大学生のとき、腎臓病の完全克服を期して自転車による九州一周の旅を敢行するなど、一徹な面と寛容な面を併せ持つ。これまで学習塾における学生教育・受験指導・教室経営、大学生をはじめとした若者の就職支援及び中高年層の転職支援、そして、企業における社員教育研修を行なってきた。
講義・講演数36,000回。指導者数はのべ35万人以上と九州でNO.1,日本でも有数の実績を誇る。大学教員として5年間「キャリア開発学演習」の教鞭をとっていた2007年には、「これからの働き方」をテーマに日本全国47都道府県を51日間で一周し取材を行った。8年間教鞭をとっている九州大学自己表現能力育成プログラムでは「愛と人生」をベースにした講義で人気が高く、これまで1,000名以上が受講している。
▼関連リンク
・【11/8、IB会員無料】イマドキの若者を『人財』に変える新時代の人材育成法を伝授!~講師は炎の教育探求家・小路智広氏
※記事へのご意見はこちら