長年、地場の中小企業の中国進出を支援している浅井公認会計士・税理士事務所代表の浅井道雄氏。尖閣問題が起きてからは、撤退案件が顕著に増えている。ただ、浅井氏はこの事態を好機と見ている。
中国は金さえ積めば、誰でも進出できる。ただ、撤退するのは、進出するよりも大変なのだと、浅井氏は話す。「コンサルフィーも進出案件より、撤退案件の方が5倍はかかります」という。なぜなら、中国では債務超過に対して、必ず何かしらの穴埋めする必要があるからだという。撤退には(1)M&Aで買取先を探す方法、(2)会社を清算する方法、(3)細々と事業を残し、フェードアウトする方法の3つがあるという。(1)に収まれば万歳だが、(2)の場合には多額の撤退コストがかかるのだ。
今回の騒動で、中国進出したものの、「鳴かず飛ばず」だった経営者の心が折れたという。今回の騒動で、腹をくくる覚悟なく中国に進出してきた中小企業が淘汰されると浅井氏は予想している。デモを起こしているのは中国国民のわずか数%以下だ。これまでは国民のほとんどの「良識のある人たち」が彼らを封じ込めてきたが、今回は抑えきれなかった。ここ10年、中国はWTO加盟、オリンピック、上海万博、GDP2位と、経済成長の話題に事欠かなかったが、それほど国民の質は上がっていないのではないかと分析している。ただ、これも「中国の素顔」で、身の引き方を考える良い機会になったのではと、浅井氏は話している。
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