<小さな中華街と化す池袋北口付近>
池袋駅北口の地下道には、「自転車を降りて通って下さい」という意味の中国語の録音テープのアナウンスが流されている。
通訳を買って出てくれた台湾人の留学生が、道行く中国人の何人かの言葉を聞き取ってくれた。「福建語、上海語は聞き取れたけど...、どこの方言なのかよくわからない方言もあります」と、苦笑い。上海、福建省出身の中国人が多いようだが、遼寧省など中国のさまざまな地方から日本に来ている。携帯電話を話す声は、日本語より中国語の方が多いのでは、と思うぐらいだ。池袋駅北口を出て、繁華街を歩けば、ほぼ確実に5分間に10人の中国人とすれ違える。
JR池袋駅北口を出てすぐにある雑居ビルには、中国人の経営する不動産屋などの店舗がひしめいていて、さながらアジアの様相を呈している。北口付近には中華料理店は言うまでもなく、中華食材を売る店が少なくとも2軒、理容店が5、6店舗、中国語の本、雑誌だけを売る書店が少なくとも2店舗はある。そのほか、中国人の営む中国人のための旅行代理店、マッサージ店、スナック、占い屋、クリーニング屋を兼ねた服飾店、パソコン修理店、携帯電話屋、法律相談所、中国人のための保育園まで幅広い業種が営業している。日本で、中国で暮らすのと同等の暮らしをしていくのに十分な店舗、業種がそろっている。
中国人向けにフリーの新聞も配られていて、その新聞に添えられた無料のボールペンには、「あなたの留学生生活がうまくいきますように」と書いてあった。そのなかの一紙「東方時報」には、新聞広告不況のなかにあって広告がびっしり。エステ、上野の風俗店の求人広告から、法律事務所の広告、なぜか、北海道銘菓の「白い恋人」も広告を出している。
<長期滞在、定住傾向に>
東京都内では、豊島区、江戸川区に定住用のマンションを購入する中国人も増えている。留学生の身分を取得し、短期で来日する中国人も多いが、ここ最近、長く滞在し、定住する傾向にある。横浜の中華街や世界各地のチャイナタウンにある牌坊や中国寺院こそないが、生活は根付いている。
中国のなかでも、もっとも給料が高水準にあると言われる香港でも学生の時給は、ショップ店員などのアルバイトで日本円に換算して時給300~360円程度(25~30香港ドル程度)。中国内陸部になるともっと安く、1時間働いて90~100円程度(4~5中国元程度)。東京で働けば、1時間でその3倍、内陸部からすると10倍程度のお金を稼ぐことができる。
池袋にある牛丼屋チェーン店でアルバイトをする福建省出身という男子学生は、「中国で働くよりも、学生として留学してアルバイトをした方が稼げる。長くこっちにいるつもりの人も多いですよ。日本が好きとか嫌いとかではなく、生活できて働けるかどうかの方が重要」と、感情論とは別の話のようだ。中国人にとって、「生活する」「働く」「稼ぐ」ということに関して、好き嫌いの感情は関係ない。異国に出て、変化を容認し、苦労をいとわないところも中国人の強さのひとつだろう。
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