<「経済チャンス」と「政治・安全保障リスク」のジレンマ!>
「尖閣諸島」問題で、嫌中派、親中派、中道派の政治家、経済人、マスコミを含めて騒々しい。ところが約1カ月経った今、この問題はいっこうに進展の気配を見せない。中国と外交交渉ができる政治家が一人もいないと言うのだ。「パイプがないのだ!」これは不思議なことだ。今年は「日中国交正常化40周年」である。今まで日本の政治家は何をしていたのか。
そんなところに石原新党の話が舞い込んできた。「日中対立の引き金をひいた」張本人が国政に進出すると言うのである。新聞によると、田中眞紀子文科相は石原慎太郎前都知事を「暴走老人」と読んでいるらしい。これは現象面から言うと正しい。記者はそこに民族派の"固定票"を狙って賭けに出た"したたかな"という枕言葉を添えて賛成したい。
大新聞は、維新の橋下徹代表の"出自"騒動同様、取材拒否が怖くて一切の批判を避けている。
しかし、冷静に考えれば、辞職の理由は、ほとんどの都民はもちろん、誰が考えても意味不明であろう。何よりも、どんなに大義名分?があっても、途中で投げ出すことは、政治家や首長の資質に相応しくないのだ。
報道によると、「硬直した中央官僚が支配する制度を変えなければならない」というのが大きな理由の一つになっている。しかし、このことは国民のすべてが前知事が、昨年知事選に「出る、出ない」と言っていた時より10年ぐらい遡って知っていることだ。前知事だけが、昨年の知事選後気づいたとは驚きである。もしかしたら、長男の石原伸晃前幹事長が自民党総裁選で敗北した時点で、急に「日本の硬直した中央官僚の支配制度」に気づいたのかも知れない。
「都政でやりたいことは全てやった。後は猪瀬副知事で充分」との発言ほど、都民に対して不遜な発言はない。「充分にやったかどうか」は税金を払っている都民、都知事選で一票を投じた都民が決めることだ。こんな初歩的なことも分からず、周りは"心地よい意見を言う"取り巻き連中ばかりとは言え、まるで「裸の王様」である。
「日中関係」は難しい問題だ。それは、中国台頭のもたらす「経済チャンス」と「政治・安全保障リスク」の"ジレンマ"に直面するからだ。しかし、日本と中国とは歴史的に深い関わりがあり、「一衣帯水」であるという事実は未来永劫変わらない。
「尖閣諸島」問題は、高度な外交交渉問題だ。前知事の独断的な理念?やパフォーマンスの先行で扱える問題ではない。もちろん、それでは、「戦争」を除けば、解決策を見つけることはできない。現実に、野田政権にはパイプがないので、そこには政治家による外交交渉は存在していない。そこで、最近は、非公式に、その"外交交渉"の能力のなさが同盟国アメリカにさえ心配されている。自国で、"大人の外交交渉"ができないとはあまりにも情けない。
しかし、どんなに、独断的でパフォーマンス先行でおこされたことであっても、大きな問題が起こってしまったことは確かだ。問題がある以上、解決しなければならない。またその解決策が「戦争」であるのは避けねばならない。正しい「国益」の追求であれば、嫌中派、親中派、中道派いずれも大歓迎である。読者と一緒に、政治レベル、民間レベルでの解決策を探っていきたい。
次回は、在日、中国人で唯一、約15年に渡り、中国共産党全国代表大会、全国人民代表大会の取材を許されている中国経済新聞社長兼編集長、徐静波氏のインタビューをお届けしたい
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