今回は、在日中国人ジャーナリストで唯一、約15年に渡り、中国共産党全国代表大会、全国人民代表大会の取材を許されている中国経済新聞社長兼編集長である徐静波氏のインタビューをお届けする。徐社長は「道のりは険しくとも、"日中友好"の架け橋になりたい」と命がけで尽力している人物の一人だ。
<時計の針を「日中国交正常化」時の40年前に戻してみる!>
――最近貴紙の姉妹メディア「日本新聞網」に載った「対日経済制裁実行反対」の記事が中国で大反響と聞きました。正直、 徐社長としては現在の日中関係をどのようにご覧になっていますか。
徐静波氏 ごく最近の中国共産党上層部の取材をしていて感じるのですが、現在の日中関係は国交正常化時の40年前に戻ってしまったという認識を強くしております。当時より条件が悪いとさえ言えます。当時は、自民党、公明党、社会党等が、非公式も含めて、それぞれ太いパイプを中国と持っていました。しかし、現在の野田政権にはそれがありません。このことが、約1カ月経った現在でも事態の改善が見えて来ない大きな理由の一つだと思います。
今、外務次官等事務レベルの交渉は進んでいますが、政治レベルの交渉は全てストップしています。現在の日本の政治家で中国と話ができる方は、残念ながら、現政府の中枢にはいません。例えば、河野洋平元衆議院議長とか、小沢一郎元幹事長とかですね。民主党内で言えば、鳩山由起夫元総理も該当するのですが、経済特区における日中共同開発の不履行等で中国側から信頼を失っています。ご自身で、提案され、約束された2カ月後に急に辞職されました。その後、この案件は進んでおりません。岡田克也副総理は、中国とのパイプもあり、冷静な原理主義者との印象があります。唯一会話が成立するような印象を受けますが、「尖閣諸島」問題にはほとんど発言をされていません。
――自民党政権になった場合は如何ですか。解決に一歩前進すると思われますか。
徐静波 もちろん、現在より中国とのパイプを持つ政治家の方も多いと思います。但し、安倍自民党総裁のこの問題に対する言動を見る限り、政府間交渉がスムーズに進むとは思えません。正直、色々な意味で、中国も焦っていると思いますし、アメリカも焦っているという話も、確かな筋から耳に入ってきます。恐らく、一番に焦っているのは日本政府だと思いますが、野田政権では、残念ながら解決の糸口は見つかりません。
中国政府は最近、一歩踏み込んだメッセージを出していると思います。それは、大きく2つに捉えられます。一つは、両国の関係は40年前の「国交正常化」時点に戻りましょうという事です。もう一つは、中国の船は「尖閣諸島」の周りを巡行しますが、邪魔とか、大騒ぎをしないで欲しいということだと思います。
この背景には、中国側としては、歴史問題を含めて、一気に、きちんと解決したい気持ちがあります。中国側は、この10年間、対日外交方針に変わりがありません。日本の場合は、自民党とか、民主党とか、政権が変わる度にこの問題が再燃します。お互いに、全部出し合って、二度と同じ問題が起こらないようにしたいのです。政権がどんなに二転三転しても、日中関係の基本方針は変わらないで欲しいということです。
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