<「上海閥」「太子党」「共青団」等の色分けは過去の遺物!>
――中国側もこの秋の「第18回共産党大会」で大きく体制が変化します。対日方針等に大きな変化はみられますか。次期体制はどのようになると予測されていますか。
徐静波 現時点では確信的な情報は入って来ておりません。近々に、政府中枢を取材しますので、その時点で確かな情報をお話できると思います。但し、いくつか決まっていることがあります。一つは、政治局常務委員の数は現在の9人体制から7人体制になります。現時点で、当確と言えるのは、習近平(現 国家副主席)、李克強(副首相)、王歧山( 副首相)、李源朝(党中央組織部長)の4名だけですね。残りの3名は決まっていません。有力候補者として、張徳江(重慶市党委書記)、兪正声(上海市党委書記)、張高麗(天津市党委書記)、王洋(広東市党委書記)、劉延東(政治局員)、劉雲山(党中央宣伝部長)の名前が挙げられています。
次期執行部人事は11月14日に発表が予定されています。それまでに、様々な方面から意見を聞き最終絞り込みをしていきます。現在の中国には、毛沢東やと鄧小平の様な、自分で全て決めることのできるカリスマ的リーダーはおりません。色々な意見を、如何に調整できるか、そのバランス感覚が重要なのです。時には戦い、時には力を結集することが必要なのです。しかし、こと外交交渉に関しては、一枚岩であることは確かです。
二代前に遡って、その特徴を見てみましょう。先ずは、江沢民政権です。江沢民の場合は、父親は市長クラスですが、人生は順風満帆でした。上海交通大学~国営企業~ロシア留学~中央政府というエリート人生です。農村を知らない都会人であった為、都市、町づくりを中心に経済政策を進めています。
次に胡錦濤(清華大学)、温家宝(中国地質大)です。胡錦濤は安徽省の田舎出身、温家宝は天津出身と異なりますが、二人とも技術者で卒業後は、かなり貧しい農村でダム建設等に従事しています。大変な重労働で、食事の時間もないぐらいでした。従って、農村、地方の痛みがよくわかります。彼らの最大の功績は、西部開発、中部開発と農村や貧しい地域にお金を投下したことです。少しだけ、経済格差が是正されました。
但し、足りなかった点は、地方政府で要職についた経験がなかったことです。わかりやすく言えば、埼玉県庁の一課長職から、一気に中央政府のトップクラスに登ってしまったことです。この10年間は共産党が以前より悪くなり、地方政府を中心に汚職が数ばかりでなく額も増大しました。
ここで少し触れておきたいのですが、日本のマスコミは特にそうですが、中国専門家と言われる方も、とてもレッテルを貼るのがすきで、「上海閥」という呼称を使い、又「共青団」とか「太子党」といグループわけをしてしまう傾向があります。
しかしこの色分けは正しくありません。当然ですが、同じグループに属するもの同士であっても微妙な関係にあると言われる人々も多いのです。いずれの世界も人間関係は複雑であり、こうした単純なグループ分けに頼りすぎると、中国政治の本質に迫れないだけでなく、進んでいく方向性を見誤ることになります。鄧小平以降、絶対的に影響力を発揮できるカリスマ的政治家は存在しておりません。
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