＜民間中小企業にお金を投下、経済成長率を維持する！＞
――習近平次期主席並びに「第18回共産党大会」で選ばれる執行部は、前政権と比べてどのような特徴がありますか。
徐静波 次期、政治局常務委員の特徴はいくつかあります。その多くが、父親がそれなりに偉かった２世です。ただし、もう一つの特徴は「下放」で苦労した世代ということです。例えば、習近平副主席（清華大学 博士）、李克強副首相（北京大学 博士）ですが、子供時代、青春時代は貧しい農村で過ごしています。特に習副主席は卒業後も志願して、地方の田舎で働いています。一時は、日本でいうところの防衛大臣の秘書になったこともありましたが、それも辞して、再度田舎に行っているのです。つまり、一兵卒のサラリーマンから、実績を挙げて社長になったと言えるのです。人生経験が豊富で、中国の田舎・農村の状況もよく把握しているので、中国の立体像をイメージできます。問題の解決を多方面からすることができるのです。李克強副首相も優秀な人物です。習副主席は論文博士ですが、李副首相は大学院博士課程を卒業しています。さらに、李副首相は海外経験が豊富で、国際感覚に優れています。
中国のGDPは世界第２位になりましたが、経済発展と並行して、貧富の差が拡大、問題が山積みで、どれを先に解決するか"モグラ叩き"ゲーム状態です。このすべての問題のベースに「不平等」があります。今回の政治局常務委員会はこのテーマに全力で当たると思います。
――日本としては、経済政策が一番気になります。特に、中小企業対策に関してはどうですか。
徐静波 中国の経済成長率は８％を超えることを目標にしています。あまり解説されていないのですが、その大きな理由の一つは「雇用問題」です。１％が100万人の雇用を創出し、８％で800万人の雇用を創出します。中国の大卒は毎年850万人前後です。例えば、５％であれば、大卒350万人が卒業後定職に就けなくなり、大きな社会問題となります。大卒世代は、全員一人っ子だからです。
2008年のリーマンショックの時、中国政府は景気底上げの為に、市場に60兆円を投下しました。この景気対策の結果不動産バブルが起こりました。理屈は簡単です。民営企業にお金を流さず、全部、国営企業に流したからなのです。国営企業にとってみれば宝くじに当たったみたいなもので、本業は利益がでないので、全部不動産に投資しました。そこで、09年から11年にバブルになったわけです。政府はこの過ちを繰り返したくないと思っています。
そこで、同じ60兆円を投下するのであれば、中小企業にお金を流そうとすることが計画されています。おそらく、11月の新しい経済方針発表の際には、この動きは顕在化してくると思います。中小企業にお金を流さないと、多方面に渡る雇用促進はできません。さらに、起業しやすくなる環境づくりも大事だからです。
【後記】
現実問題として、今、一人平均12万の消費があった中国観光客は全面ストップ、中国国内の不買運動は、自動車、電気製品等に広がり、日本経済に大きなダメージを及ぼしている。経団連等財界と民主党の信頼関係のなさは中国でも有名である。そして、日本の政治家は、それぞれが独自の理念、パフォーマンスで勝手に動いている。しかし、そのしわ寄せは、全て「国民」が被るのだ。もう、"いいカッコ"主義タイプの政治家はいらない。実質的に、「国民」の生活にとって役に立つ、地に足の着いた政治家の出現を期待したい。
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