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復興予算42億円を「核融合エネルギー研究費」に流用!~「震災復興 欺瞞の構図」原田 泰著(新潮新書)
書評・レビュー
2012年11月 5日 10:50

 タイトルは「悪魔」の仕業ではない。日本国「財務省」とその下部団体である「民主党」の仕業だ。

 著者は言う、「政府が震災による毀損額を過大に見積もるのは、復興予算と別の魂胆があるからだ。
 事業官庁としてはこれを機に多くの予算を獲得、財務省としてはこれを利用して増税(増税は成功した)したいからだ」と。

 著者は元財務省財務総合政策研究所次長。大和総研常務理事を経て、現在早大政経学部教授、第29回石橋湛山賞を受賞したエコノミストである。

 著者は東日本大震災で毀損された物的資産は、公的資産を合わせて、せいぜい6兆円(19兆円で決定)と見積もり、復興増税は必要ないと一人でキャンペーンをはってきた。筆者がこの本を手にしたのは、発刊すぐの今年の4月頃である。筆者は月に新刊約20冊程度読む中で1~2冊、インパクトのあるものを書評でご紹介しているが、当時は不徳にもご紹介できていない。今改めて、復興に関する政策、特に「復興予算」の使われ方を現実に目にして見ると、この本の予想は見事に当たっていたと言わざるを得ない。

 著者は、膨大なデータを操り、日本人一人当たりの物的資産は966万円であると算定している。ところが、今回の復興財源法では、被災者一人当たり、4,600万円が支払われる計算になっている。勿論、本当に被災者に渡るのであれば、"モラルハザード"が起こるという懸念はあるが納得はいく。ところがその25%以上が関係のないところに使われたことが判明した。これは納税者である「国民」に対する詐欺行為である。

 反捕鯨団体対策と調査捕鯨への補助費用として23億円(農水省)、沖縄県国頭村海沿い国道の補修工事費用として5億円(国交省)、老朽化した国立競技場の補修費に3億円(文科省)などきりがない。
 福島大学校舎の壁はヒビが入ったままであると聞くが、中央合同庁舎施設の改修、東京の税務署の改修にも流用している。ほとんど犯罪に近いのは「核融合エネルギー研究費」や「NBC(核生物化学兵器)偵察車」関連に数十億の流用をしている点だ。

 著者はこの本で、「復旧」(現状への回復)と「復興」(現状への回復+未来への創造)のマジックを説いている。筆者もそうだが、東日本大震災のような大きな災害が起こると、未来を見据えて、どうしても「復旧」より「復興」の方が被災地に相応しいと思い込んでしまう。そこで、財務省という白アリが巣作りをする機会を与え、法解釈次第で、何でもアリの世界になってしまうのだ。

 震災直後、筆者が参加していた産・学・官・民の「復興対策会議」でもコンサルティング会社の幹部が「〜省が企画書を欲しがっている。予算化するので何でもよいそうだ。早い者勝ちだ。何かないか?」と言っていたのを改めて思い出す。

 著者によると、これは今回に限ったことではないらしい。1993年の北海道南西沖地震では、奥尻島島民一人当たり1,620万円、1995年の阪神淡路大震災では被災者一人当たり4,000万円が計上されている。著者はさらに、「復旧」でなく「復興」という言葉を許すと、今回の様に、被災地の復興と関係のないことをする理由を与え、かえって工事も遅れ産業の素早い「復活」の妨げになると言う。
卓見である。

 国会、新聞、TV等でも「復興予算」の使われ方が、最近"急に"ニュースになっている。 しかしその割には、会計検査院は勿論、大マスコミも真相を追求しない。そして、これほど大きな話なのにその出処が不明なのだ。信頼できる筋からは財務省側のリーク説が聞こえてくる。

 「消費増税」賛成キャンペーンを張った大マスコミへのご褒美と「国民」へのガス抜きであるという。と言うことは"もっと大きな悪"はまだ別にあるらしい。

<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。


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