<石原慎太郎氏も恐れた政治家>
10月25日昼、東京で中国経済新聞の徐静波社長を取材した。午後2時を過ぎたところで大方の取材を終えた頃、徐社長が突然、「次の取材、記者会見があるから失礼する」と立ちあがった。「何の会見ですか?」と尋ねると「石原東京都知事が緊急記者会見をするようだ」という回答。「知事を辞めて新党立ち上げの発表するのでしょう」とこちらの見解を伝えた。「まさしく新党立ち上げの記者会見だ。コダマさん!!石原新党は影響を与えるまでに議席を取るだろうか?」と、徐社長は質問を投げかけてきた。尖閣諸島の問題もあり、中国関係者は、石原氏の存在に脅威を抱いているのであろう。
一方で、私は別の見方をしていた。「今晩、〝国民の生活が第一〟の政治パーティが開催される。何もなければ、すべてのマスコミが記事で取り上げる。当初、翌26日に石原氏は新党の立ち上げ発表を予定していたはずだ。前日の〝国民の生活が第一〟の記事に霞んでしまうと判断し、急きょ1日早めて記者会見を強行した」と。中国に脅威の念をもたらす存在の石原氏だが、どうも小沢氏には劣等感を抱いているようだ。その意識は、自民党代議士時代に小沢氏の辣腕に屈していた負い目に起因しているのかもしれない。
<名もなき組織なき4,200人が集まる>
夕方午後5時半にホテルニューオータニ東京の会場へ向かった。開会は午後6時。30分前から数多くの人たちが受付に群がっている。手続を済ませるのに15分かかった。そこから入場するのに10分要した。入口前では、代表・小沢一郎氏をはじめ、議員たちがズラリと並び、出席者一人ひとりに握手をして出迎えていた。どおりで会場内に到達するのに時間がかかるはずだ。小沢氏はにこやかに挨拶を交わしていたが、70歳を過ぎた老人の感じは微塵もない。闘志満々のオーラが伝わってきた。〝七転び八起き〟しながらも新たな闘いに向けて闘争精神を燃やしている。さすが、タダ者ではない。
ようやく入場。会場内のスクリーンには、小沢氏が団長として行なった、反原発や自然再生エネルギーに関するドイツ視察の模様が映し出されていた。開会時の会場内は、立錐の余地もないほどの込み具合。目勘定で「3,000人は超えているな!!」と直感した。結果的に4,200人が参加していたという。「やはり政治家・小沢には根強いファンがいるのだな」と再認識した。
また、再評価を余儀なくされた。この政治パーティで、来賓挨拶をした3人は強力な組織団体の要人ではなかった。ある小さい自治体の首長、農協長、若い母親と一般市民が挨拶をしたのである。故意の仕掛けかもしれない。既存の利権組織の存在を隠す意図があったにしても今の小沢氏の〝国民の生活が第一〟を公然と応援する奇特な団体は稀有だ。つまり、集まった4,200人は組織動員された人たちではなく、それぞれが個人の意思で集まった人なのである。その実態を目撃すれば、『政治家・小沢一郎』を再評価せざるを得ない。
超満員の席上に立って挨拶した小沢氏は感激のあまり涙ぐむ場面も見せた。民主党と決別してからの激闘の苦労を振り返ればひと粒の涙が流れるのも当然だろう。小沢氏は今後の政治方針として『反消費税』に『反原発』を加えた2大政策で次の選挙に臨むことを表明した。これを聞いて「小沢という政治家は、国民に提示する選挙対抗軸の策定に関して天才だ」と感服した。しかし、翌日の新聞・テレビは、国民の生活が第一の政治パーティをまったく無視した。
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