鹿児島県で、行政権力による住民無視を象徴する2つの事例が進行している。ひとつは報じてきた薩摩川内市の産業廃棄物最終処分場の建設問題、そしてもうひとつが鹿児島市松陽台町に県が計画する県営住宅の建設問題である。記者は昨年、鹿児島県庁を訪れ、県営住宅の所管課である県住宅政策室に取材し、計画内容の確認を求めていた。概要は次の通りだ。
県や住宅供給公社が開発するガーデンヒルズ松陽台は鹿児島市の西方に位置し、鹿児島中央駅からJR九州鹿児島本線の上伊集院駅まで約10分、南九州西回り自動車道松元インターまで4分というロケーションを持つ。従来の計画では「最高の住環境」を謳い文句に『戸建住宅』の用地として470区画を販売する計画だったはずだ。
ところが、県の思惑通りに戸建用地がまったく売れず、当初の完売が170区画程度だったため、県および県住宅供給公社は「店舗等用地」などと説明してきた3区画の土地に加え、ガーデンヒルズ松陽台で最大の面積を占める区画約5.6 haを「県営住宅」に転換する方針だ。
寝耳に水だったのは松陽台で戸建住宅を建設し、将来のまちづくりに夢を抱いていた住民たちだった。この県側の強引な方針転換に対して反対運動に立ち上がった自治会に向けて、県や公社が度々説明会を開いてきたというが、住民側の説明要求をはぐらかしたり、回答をしないなど、不適切な対応ばかりだったとされる。
こうしたなか、福岡市の調査報道サイト「HUNTER」が請求した薩摩川内処分場と松陽台県営住宅問題についての情報公開を、県が拒否するという事件が起きる。この問題は大手メディアにも取り上げられ、あわてた県が一転して情報開示に応じるという前代未聞の大失態を演じていた。
松陽台の県営住宅問題は、はじめから隠蔽の臭いが漂っていたのである。あれから1年。改めて取材を開始した。
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