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「維新銀行 第二部 払暁」~第2章 クーデター計画(24)
経済小説
2012年11月13日 07:00

<谷野頭取包囲網(24)>
 堀部は吉沢との常盤支店の引き継ぎを終えると、小倉支店に戻って後任の桜木道夫支店長と土日を挟んで一週間かけて引き継ぎをした。
 正式に常盤支店長としての活動を開始した6月14日(木)の昼前、労働基準監督署の本間と名乗る人物から、連絡が入った。
 「ご足労をお掛け致しますが、明日の朝10時に常盤地方合同庁舎4階に来て頂けますか。内容については今お話しできません が、明日お越しになってから詳しいお話をさせて頂きますがご都合は如何ですか」
 と、丁寧な言葉遣いではあったが、その語尾は威圧的であった。
 堀部は、
 「明日の朝10時ですね。お伺いさせて頂きますが、具体的にはどのような用件ですか」
 と、何らかの手掛かりを掴もうと聞いたが、本間は、
 「電話では行き違いがあったりしますので、来て頂いてから詳しいお話しを致します」
 と、事務的に日時を指定して電話を切った。

b_20.jpg 翌日堀部は、常盤地区推進役の吉岡孝雄と一緒に、地方合同庁舎4階にある常盤労働基準監督署に本間第1課長を訪ねた。受付の女性に案内され暫く応接室で待っていると、3人の署員が入って来た。初めに名刺を差し出したのは粟屋繁樹署長であった。次に昨日電話してきた本間憲一郎第1課長、続いて西部労働局 労働基準部 監督課 河合博俊労働条件紛争担当官と名刺交換をして席に着いた。

 最初に粟屋署長が、
 「実は今月の4日、維新銀行の女子行員2名が残業代の不払いについて申告をしてきました。その申告の詳しい内容については本間課長の方から話しますが、維新銀行が就業規則に則って労働条件を遵守しているかどうか、また申告して来た2人の女子行員の申し出が正しいかどうかについては、後ほど資料を提出しますのでご検討頂きたい。
 いずれにせよ、県内を代表する企業で、現役の当事者が直接この様な申告をするというのはあまり例がありません。そういった面でこの残業代の不払い申告を理由に、この2人に対して不当な労働行為があれば、西部県内全署で実態調査をすることになりますので、くれぐれも慎重な対応をお願いします。私はこれで席を外しますが、後は本間課長と河合担当官から詳しい説明を聞いて下さい」
 と、言葉遣いは丁寧であったが、相手にとって不足はないとの意識からか、徹底的に調査する態度を露わにして応接室を後にした。

 堀部は、
 「今月4日と言えば、吉沢支店長と引き継ぎに来た当日ではないか。2人がその日を選んで休暇を取り、労働基準局に駆け込んだとなると、これは相当根が深い問題になるな」
 と、心のなかで呟いた。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。

▼関連リンク
・「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(1)


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