建築家・外尾悦郎氏によるトークライブが、11月9日、住吉神社の能楽殿にて開催された。外尾氏はスペイン・サグラダファミリアの主任彫刻家を務めることで知られる。今回は対話形式を望む外尾氏の意向により、限定60名で開催。密度の濃いものとなった。
冒頭、主催した九州サムライの会代表・ヒミ*オカジマ氏がユーモアを交えてあいさつ。和やかな雰囲気で始まった。
その後、外尾氏が「豊かさ、幸せとは何か」について語り始めると、雰囲気は一変、歴史的文化財「能楽殿」の厳(おごそ)かさが会場を包んだ。外尾氏は人間を成長させる「疑問」の重要性を説いたうえで、質問に回答。来場者の「幸せ」「豊かさ」「悩み」「死」などの「問い」に、独自の目線で答えていった。
「幸せ」に対する答えでは、サグラダファミリア設計者ガウディにとっての「幸せ」を紹介。不遇の幼少期を経て「人を幸せにすること」へ至ったことが、歴史的な建築家へ変貌する契機となったとした。
「豊かさ」については、会場となった「能楽殿」こそ豊かさの象徴と力説。足りないもの、あまったものがない状態こそ「豊かさ」だと説いた。
「悩み」については、まったく資料のない作品の依頼が自身最大の悩みだったことを告白。死を考えるほどの深刻なものだったことが、赤裸々に語られた。そして「ガウディを見る」のではなく、「ガウディが見ていたものを見る」ことでその悩みから解放されたと告白した。
いかなる難問でも質問者の視界を晴らすような明快な回答に、質問の声は尽きず、予定を超過する濃密な内容となった。最後に外尾氏は、自分を認められるまで「一生懸命に生きる」ことを訴えてライブは終了。来場者は充実した表情で家路についた。
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