<ふたつの大きな問題が浮上>
住民が鹿児島県を横暴このうえないと批判する場所は、鹿児島市松陽台町にある「ガーデンヒルズ松陽台」。この場所に訪れたのは約1年前、別件の県政の取材を行なって浮上した案件である。なぜ住民は県との対立を深め、県が推進する分譲計画に反対したのか。
<店舗等用地問題>
松陽台では分譲が開始された当初公社が配布したチラシに「店舗等用地」と明記されている土地があった。県はこの土地を含め3つの区画を公社から購入。県営住宅約30戸を建設する土地5,775m2と集会所建設と店舗等用地を合わせた4,283m2の合計3区。この店舗等用地にスーパーなどの商業施設を誘致すると明言していたとされていたのだ。
しかし、松陽台町で開かれた地元説明会で、「店舗等用地」と記されたチラシはないと説明。その後、このチラシの存在が明らかとなるなど、県の隠ぺい工作は明らかで住民側が怒りを覚えるのもわかる。
人生の買い物で一番高額なのはまず「住宅」、次に「各種保険」と言われており、そのため様々な情報を収集するのが普通である。県が開発を行ない、そのうえ「最高の住環境」と明言するとならば、人生のなかでもっとも高い買い物には、周辺の環境とともに日常生活への利便性が生活設計として含まれているはずである。それを見越して住民は購入を決めたであろう。それなのに、県は説明もなしに計画を変更し、県営住宅の建設計画をもちだしたのだ。
県の計画変更は、それまでの約束を反故にするものとしか映らない。住民が怒るのは当然と言える。県の住宅政策室は「確かに県として土地は購入したが、商業施設の誘致を諦めたわけではない。誘致は続ける」としている。
<県営住宅問題>
そのほかにもっと深刻な問題を県は持ち出してきた。県はそれまで、約11haの予定地に戸建用地470区画を販売する計画だったが、思うように売却が進んでいない。そこで松陽台で最大の面積を占める区画約5.6 haを約300戸の「県営住宅」にしてしまおうというものだった。
松陽台計画が公社の経営を圧迫していたこともあり一計をめぐらせたのだ。
県は10年かけて約300戸の県営住宅を建設する計画であることを認めている。しかも1年間に約30戸つくるため、その都度公社から土地を購入していくことになる。もともと松陽台は「最高の住環境」を謳い文句に『戸建住宅』の用地として販売する計画だった。にも関わらず、県営住宅を建設するために開発されつつある。
住民が県営住宅の建設に反対しているのは、宣伝や説明を信じて購入した住民に何の相談もなく、戸建住宅を中心とした"まちづくり"を放棄して、いきなりガーデンヒルズ松陽台で最大の面積を占める区画約5.6 haをすべて「県営住宅」にすると公表した「約束違反」に対してなのだ。
そして開発計画変更に関しては、誰がいつ決定を下したのかについての公文書上の記録が存在していない。これでは地元住民らが不信を募らせるのは当然だろう。
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