<民主党は空中分解?>
16日、衆議院が解散した。野田佳彦首相が「解散」の言葉を正式に口にしたのは、同月14日の安倍晋三自民党総裁との党首討論のときだ。内閣支持率の下落に歯止めがかからないなか、ついに解散に踏み切った野田首相の心のうちは誰にもわからない。
民主党は前回の総選挙で、国民に対して美味しい飴だけをマニフェストに謳い政権を獲得した。しかし3年半が経ち、国民は民主党に対して失望と怒りを覚えている。
野田首相は鳩山由紀夫、菅直人に続いて3人目の民主党の首相となったわけだが、このままいけば、民主党政権最後の首相となることは間違いない。
また、解散後も民主党からは離党者が続出するなど、野田首相の求心力はいまや皆無に等しい状態だ。12月4日の公示までには、まだ時間があり、さらなる離党者が予想され、選挙態勢が構築できるのか不安視する声もあるが、民主党がどこまで巻き返しを図れるか注目したい。
<国民は何党に期待しているのか>
自民党は今回の総選挙で単独過半数(240議席以上)の議席を獲得し、政権奪還を目指しているが、日本維新の会などの第3極の動きいかんによっては、単独過半数におよばない可能性が十分にある。民主党がダメでも自民党に国民が期待しているとは到底思えない状態だ。その証拠に自民党の支持率は20パーセントを切っている。
一方、「自民はダメだから民主」「民主もダメだから第3極」という安易な判断で、第3極に走ることは、前回の総選挙と同じ轍を踏むことになりかねない。
「国民のレベル以上の政治家は生まれない」という言葉があるが、「国民のレベル以上の人間が政治家になるべき」であり、今回の総選挙では、ポピュリズムに流されないようにして、将来の選択をするべきである。
<自民党は保守色を全面に打ち出せ>
安倍総裁になって、本来の自民党らしさ(ここでいう自民党らしさとは結党時の保守政党の姿)を取り戻しつつあるが、政権奪還後に憲法、集団的自衛権の解釈の変更を始めとする国家の基本問題に取り組めるかどうかは未知数といえる。なぜなら党内に安倍総裁の国家観・歴史観と相反する議員も多数いるからだ。
しかしながら安倍総裁が自身の国家観・歴史観を全面に打ち出すことが、自民党の再生に繋がり、連日、日本の領海や接岸水域に侵入している中国への牽制にも繋がるだろう。
国民の多くは「強い日本」に期待している。その期待に応えるためにも、安倍総裁は保守色の強い政策を掲げて総選挙を戦うべきである。
あわせて公明党(創価学会)の票に依存しない選挙態勢の基盤をつくり、結党時の精神に立脚した自民党へと生まれ変わるべきである。
次回は第3極について述べたい。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第3版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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