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「維新銀行 第二部 払暁」~第2章 クーデター計画(29)
経済小説
2012年11月20日 07:00

<谷野頭取包囲網(29)>
 堀部の依頼を受けた松谷市長は、まず中国財務局の出先機関である西部財務事務所(西京市)を訪問し、「石炭局跡地」を維新銀行に譲渡したい旨を打診したが、事務所側は10年間の買い戻し特約条項に抵触すること、また地価下落による損失が表面化することを恐れて、首を縦に振らなかった。
 官僚組織を熟知している松谷市長が何度も足を運び説得を続けた結果、財務事務所も重い腰を上げ、土地価格が表面化しない等価交換によって「石炭局跡地」を維新銀行に譲渡する上申書を、中国財務局に提出するところまで話は進んでいた。そんな矢先に堀部は松谷市長から緊急の呼び出しを受けた。

img_02.jpg 堀部は急いで常盤支店の向かいにある常盤市役所2階の市長室に向かった。秘書に案内されて応接室で待っていると、入室してきた松谷市長は椅子に座ると開口一番、
 「堀部支店長、石炭局跡地の件、折角良いところまで行っていたのに振り出しに戻りましたよ。本当に残念です。と言うのは、谷本頭取の後を受けて新しく会長になられた栗野氏が7月初旬、会長就任の挨拶に中国財務局を訪れた際、財務局長や理財部長に対して、『常盤市の石炭局跡地の件、常盤市長から西部財務事務所を通じて話を進めているそうで、早く承認して下さいよ』とか、『西部県の有力な国会議員にも手を回している』
 と話すなど、かなり高圧的な態度を取ったらしいのです。財務局内でも栗野会長の横柄な態度が話題となり、それを聞いた西部財務事務所長もつむじを曲げ、話は振り出しに戻ることになったそうです」
 と、堀部に告げた。

 そのため一年間の空白が生まれることになった。この件をきっかけに、堀部は栗野会長の振る舞いに不信感を募らせることになった。この栗野の行為は、堀部が後に展開する「谷野頭取交代劇」で、谷野頭取罷免に動いた谷本相談役、栗野会長、沢谷専務などの守旧派と一線を画す大きな原因の一つになった。

 その後も堀部の度重なる依頼に松谷市長も動き、西部財務事務所と粘り強く折衝を続けた結果、「石炭局跡地」と常盤支店との等価交換が承認されることになった。堀部は自分が支店長の時に建物を完成させたいと思っていたが、栗野の不用意な発言により1年間の空白期間が生まれ、用地取得に4年もの歳月を要すことになり、その夢を果たすことが出来なかった。堀部は取締役常盤支店長を退任後に、完成した建物の見学会の案内状を受け取ったが、決して足を運ぶことはしなかった。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。

▼関連リンク
・「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(1)


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