鹿児島市の人口は現在約60万人、うち有権者は約49万人とされている。前回(08年市長選)の投票率は25.47%、うち森市長が得票したのは20.56%。その前の04年は投票率40.76%、得票率は22.31%だった。数値上では、これまで市長は4~5人に1人の信任で選ばれていたことになる。
赤崎義則前市長時代から数えて通算7期28年間、鹿児島市役所の幹部職員OBによって市政は担われてきた。「これで本当に市民の声を聞いた政治が行なわれていると言えるでしょうか」と、今回の候補者の1人である渡辺信一郎氏の後援会長を務める、いわさきグループ代表の岩崎芳太郎氏は疑問を呈する。
「私は30年間、鹿児島のインフラ・観光を支える事業をしてきましたが、市政に対してはずっとしっくりきませんでした。今回の市長選に直接関わってみて、ようやくその謎が解けたような気がします。鹿児島市は思った以上にひどい状態だとわかったのです」(岩崎氏)。
この思いは、渡辺氏も共有している。
「私は鹿児島で生まれ、東京で経営者として活動してきました。市長選への出馬を決意したのは、国の現状を見て『国には地方を変える力がない』と思ったからです。鹿児島市の大きな潜在能力を市長として引きだすことができれば、多少国が荒波にのまれたとしても生き残っていける地方自治体を具現化できると考えています。しかし、鹿児島市の人材は水準が高いはずですが、現状を変えようとする元気、覇気がないと感じています。これは28年間、市長を頂点とする市政の構造が変化することなくカンフル剤的な提案もしなかったため、守旧派というか牙を抜かれた市民になってしまったと言えるでしょう」(渡辺氏)。
こうした保守構造がもたらすものは、政治経済の停滞・閉塞という状況でしかない―これが、彼らを現職との戦いへと駆り立てた最大の要因である。とはいえ、"いまだこうした主張者はマイノリティの存在である"という厳然たる現実もまた、目の前に横たわる大きな問題だと彼らは捉えているのだ。
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