中国や台湾を拠点に、アジア各国を渡りながら取材活動を続けるフリージャーナリストがいる。現地のマスコミに精通する彼が、日本との文化の違いを感じながらも、アジアならではの面白さについて、リアルにレポートする。
台湾は、テレビでの「表現の自由度」がかなり高い。
中国は、国の文化部やラジオ・テレビ総局の監視がある。日本人は「日本は自由だ」と感じているかもしれないが、実は、放送禁止用語やスポンサー、表現において、曖昧なプレッシャーはかなりある。曖昧で明文化されていないものも多いから厄介。例えば、日本の五輪中継で「今年のオリンピックは盛り上がりに欠けましたね」と言うことはできるだろうか・・・?いまの日本テレビ界では無理だろう。
台湾人の司会者に、7~8人の外国人ゲストが参加する台湾のあるトーク番組。
外国人から見た台湾の面白い文化、台湾にはない外国の独特の文化を、ユーモラスに紹介する番組だ。
トークテーマは毎回違い、
「世界各国の面白い交通手段」
「世界各国の怪談話」
「台湾人に礼儀はあるか・・・」などなど。
出演するのは台湾に移住して来た外国人で、白人、日本人、韓国人、黒人など人員構成は毎回変わる。表現はかなり自由。ディレクターも事前打ち合わせで「相手の話に割り込んだり、自由に盛り上げてください」と出演者を鼓舞する。収録番組のため、危ない表現は編集でカットできるのだが、日本では「絶対アウト」という表現まで放送されている。
ある放送回のテーマは「遺伝」で、南アフリカ出身の黒人がゲスト。
トークはテーマから脱線気味。
ゲスト「黒人にも色の区別があるんですよ・・・」
司会者「全部、黒じゃないの?我々は、全然、区別がわからないよ~」
ゲスト「3つの区別が、黒人の色にはあるんですよ」
司会者「えっ?!3つも!?どんな区別なの?」
スタジオは興味津々。
ゲストは
「一つ目は『黒』、次に『とても黒い』、最後は『かなり黒い』」
会場は大爆笑・・・。
フリップ写真を取り出し、3人の黒人の色の違いを説明していく。台湾人司会者や他の外国人ゲストには色の区別はつかないが、それでも、区別を説明していく。・・・と、こういう展開。
日本ではまず「黒人」そのものがテーマになること自体がタブーだが、台湾では珍しくない。台湾でも放送表現については「外国人ゲスト本人たちが言っている」というのが言い訳だが、台湾人司会者も積極的にいじっている。
番組の最後には「これらは個人の見解であり、局の見解ではありません」という字幕が出る。テロップさえ出しておけば・・・。この字幕を盾に、日本では有り得ないレベルで、かなりの自由自在感がある。
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