今年７月に行なわれた鹿児島県知事選では、現職の伊藤祐一郎知事に対し、反原発を争点に南方新社代表の向原祥隆氏が挑むかたちとなった。得票数は伊藤知事39万4,170票に対し、向原氏が20万518票。選挙では向原氏の勝手連ができるなど支援の輪が広がり、鹿児島という地にあって、かなり善戦したといえよう。今回の鹿児島市長選では、候補者の１人である祝迫光治氏が原発の即時廃炉を最大の争点として訴えている。

　脱原発の件について、岩崎芳太郎氏に聞くと「原発をどうするかというリアリティのない話はしません」と切って捨てる。「もちろん、脱原発という大きな流れがあるのはわかっていますが、それ自体を今ここで議論したところですぐに変えられるものではありません。それよりもまず、鹿児島市民の意識を変えて経済振興するのが先決です」（岩崎氏）。

　そもそも岩崎氏は、鹿児島商工会議所副会頭を務めるなど、いわば体制側の人間と目される立場である。事実、同じような公職に就く人間はほとんどが現職の森博幸氏を推しており、市民には岩崎氏のような存在は異色に映っていることだろう。こうしたなか、渡辺信一郎氏を推すことにはリスクも伴うはずだ。

　渡辺信一郎氏もその点は理解したうえで、「岩崎社長とは"鹿児島を変えたい"という理念が一致し、協力してもらうことにしました。ただし、私は一企業、一個人のために働くことはしませんともお伝えしております」という。

　しかし、こうした一見異色に見える行動にも、民間の賛同者が増えているようだ。渡辺氏の事務所には、鹿児島市内の民間企業の推薦状が数多く貼りだされている。「民間の力で鹿児島市を変えたい、ということを訴え続けているうちに、これだけ賛同してくれる方が増えました。今は手ごたえを感じています」と渡辺氏は語る。

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