原発事故での九州への避難者の実情を聞き、「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針に被災者が必要とする内容を反映させようと、同支援法福岡フォーラムが福岡市で21日、開かれ、講演や、「本当に必要な支援を考えよう」をテーマにしたワークショップがあった。(同実行委員会主催)
避難者ら120人が参加し、「自主避難した私たちも支援対象になっている法律ができたことに感動した。国や行政から(避難者だという)存在を認められない孤独感を感じる」「ふるさとは何十年、何百年、放射能とともに生きることになった。この法律を肉付けして、国がどれだけひどいことをしたのか思い知らせたい」などの発言が相次いだ。
フォーラムでは、2人の避難者が現状を報告した。東京都から福岡市に母子避難している、あやもさん(30)=仮名=が「(放射能の危険から)子どもを守りたいと思って避難した」と語った。昨年3月に二男の妊娠を知り、昨年5月には2歳1カ月の長男が下痢や鼻血など体調不良になったので、避難を決めたという。食べ物などの放射能汚染の不安を述べ、甲状腺検査で息子のリンパに腫れが見つかったことを明かした。検査や医療費の無料措置や「安心して避難できる場所づくり」を求めた。
木村雄一さん(52)は、「第1に家族を守りたい、第2に、汚染された地域のために何かしたい。脱原発は3番目なんです」と話した。福島市から佐賀県鳥栖市へ、妻と1歳7カ月の娘といっしょに避難している。「自分だけが安全なところへ避難した罪悪感」を感じ、支援の第一歩として被災地へ自然農法の野菜をつくって送り、次いで九州への避難者にも安心できる野菜を届け始めたと述べた。「避難者自身がなぜここまでやらなければいけないのか」「政府や議員が手を差し伸べてくれなかったからだ」と訴えた。
福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)共同代表の河﨑健一郎弁護士が同法の内容と課題について講演した。河﨑弁護士は、「避難の権利を認めた」「健康被害の未然防止と医療費減免」という2つの基本理念を紹介し、個別施策は検討中であり予算措置はされておらず、基本方針は来年1月策定見込みだとして、復興庁に被災者・避難者の具体的な要求をインプットすることが重要だと述べた。
国への要望として提案しているSAFLAN試案を紹介。「支援対象地域」には、福島県全域と、文部科学省航空機モニタリング結果に基づいてバックグラウンド(環境放射線)を除いて年間1ミリシーベルト以上の被曝が予想される地点を含む市町村を指定するとともに、支援対象地域外でも、個別状況を考慮して幅広く対象にするとしている。
今後大事なこととして、「それぞれの地域で、福岡なら福岡の声をあげる」「運動は長期にわたるので、一歩一歩獲得していく」「選挙で脱原発が争点になったときに見分けるファクターは、現に起こっている被曝に対しどんな対応をとっているかだ」と強調した。
11月28日には、参院議員会館で集会が開かれ、「原発事故子ども・被災者支援法」基本方針に関し復興庁に要望する予定。
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