<台湾に製造拠点―海外進出本格化へ>
苦節10年余、同社の技術はようやく花開き、開発からビジネスに離陸の段階を迎えようとしている。2011年12月期は、会社設立以来初めて最終損益が6,000万円の黒字に転換した。黒字転換の理由について高本陽一社長は、「これまでは蓄積期。やっと品ぞろえの幅が広がってきたため」と話す。過去10年余り、さまざまな生活分野に対応した製品開発に取り組み、商品構成は車椅子ロボット「ロデム」や歯科患者ロボット「デンタロイド」(別名「昭和花子」)、レスキューロボット「援竜」などと多様化。
ロデムやデンタロイドは、ネットを経由して海外からの引き合いが急増している。ロデムは車椅子だとベッドやトイレからの乗り移りが不便だったのを、高齢者のニーズに応えロデムから独力でベッドやトイレ便座に移動できるようにしたもの。デンタロイドは昭和大学と提携し、もともと歯科大学学生の練習用に開発したが、ネットで製品を見たサウジアラビアとトルコの大学や研究機関から注文があり、サウジには現地の販売会社を通じ13年、まず20台を納品する。
デンマークでは、実証実験を機に同社初の海外現地法人をファボー・ミッドフュン市に資本金120万円で設立。社長には同社監査役の松尾潤二氏を派遣し、現地スタッフと合わせ2名でスタートした。デンマークを海外進出第1号としたのは、福祉先進国で福祉ロボットの国際基準をつくるのに適しているためで、将来は同国を拠点にEUへの進出を狙う。
11年12月には、台湾・台北市に製造拠点となる「テムザックフォルモサ」を設立した。同社はこれまで自前の製造拠点を持たなかったが、量産化のメドがついたことから、コストが比較的安く技術力の高い台湾企業に生産を委託し、海外に輸出する。技術本部長として派遣された川久保勇次氏は34歳で、九州工業大学大学院博士課程を中退して05年に同社に入社した。根っからのロボット好きで、遅配欠配の間も同社に踏みとどまった。
「周囲の人のお世話になり、辞めるに辞められなかったのが率直なところ」と話す高本社長だが、視線は海外に向いている。九州生まれのロボットメーカーがグローバル企業に脱皮する日は近い。
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<COMPANY INFORMATION>
■(株)テムザック
代 表:高本 陽一
所在地:福岡県宗像市江口465
設 立:2000年1月
資本金:10億7,763万円
TEL:0940-38-7555
URL:http://www.tmsuk.co.jp/
<代表者 Profile>
高本 陽一(たかもと・よういち)
1956年、北九州市小倉北区生まれ。神奈川大学法学部卒。84年、高本商会に入社。91年、(株)テムズに社名変更し、代表取締役社長。2000年1月、(株)テムザックを設立し、代表取締役社長に就任。
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