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福岡の特選企業

祈りと感謝の気持ちで立ち会うお別れの時間(後)~(株)ラック
福岡の特選企業
2012年11月25日 07:00

<貸切型邸宅で家族葬>
 最後のお別れという原点を大事にしようと生まれたのが、新しい葬儀のかたち、「邸宅葬」である。そのための家族葬専門会館「平和清浄庵」が2012年9月、福岡市南区に完成した。会館といっても、100坪の木造住宅だ。1日1組限定で、自宅の温もりが感じられるスペースでゆっくりした葬儀を提供していく。たとえば、祭壇を真ん中に置いて棺の周りを家族らが囲み、故人の顔を見ながら儀式を行なう。

 「昭和の時代、自宅で、仮通夜、通夜、告別式、初七日と、1つひとつ大事な儀式があり、亡くなられた方がお布団で寝ている周りに家族たちが集まって、思い出を語り、お世話になった感謝の念で時間を過ごした。人の死ですから悲しかったけど、温かかった、優しかった。そういう葬儀に戻ろう。時間で流れるのではなくて、1つひとつきちんと過ごしていく葬式にしようと思います」(柴山佳夫専務)。

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 しかも、何百人も参列者が訪れるかたちではなく、家族が中心となって、温かかく、しめやかに執り行なう「お葬式」になる。すでに事前相談が約20件寄せられている。2カ所目の「都府楼清浄庵」が太宰府市に着工し、13年1月に完成予定だ。

<火葬のみを行なうシンプルな「直葬センター」>
 無縁社会を反映してか、遺体を部屋に放置していたというニュースも時折、目にするようになった。柴山専務の胸が痛む。「一言相談していただければ...」と唇を噛む。

 最近増えているのが、火葬のみを行なう「直葬」というスタイルだ。葬儀を行なわないかたちである。葬儀をしないので、お坊さんも来ない、親族も来ない、最後のお別れは火葬場でということになる。東京・大阪では亡くなった人の3割が直葬だとも言われている。

 葬儀を行なわないといっても、病院や自宅から火葬場に直行というわけにはいかない。亡くなってから24時間以内は火葬できないため、火葬するまでの間、安置することになる。業者によっては倉庫に何人もの遺体を安置して、仏壇もなければろうそくの1本も立てない、線香もないところもあるという。それでは、遺体が24時間過ごすだけの死体安置所に過ぎない。

 「亡くなられたとはいえ人間ですよ。葬儀社がやらないと、単に物の扱いになる。ビジネスとしてやられてはたまりませんよ。私たちがやらなければ、仏さまがひどい目に遭う」と、柴山専務は憤る。

 同社では、日本初の直葬専門施設として、「直葬センター」を11年10月にオープンさせた。「直葬センター」ではBGMを流し、祭壇や枕飾りを設営し、ろうそくを立て、見回りもしている。もちろん、安置中に家族らがお参りすることもできる。ビジネスとして利益幅は小さいが、「最後の別れ」を大切にする考えがあるからできることだ。

 「宗教観は別として、親であったり、子どもであったり、兄弟姉妹でしょう。肉親の最後のお別れをしないで、『火葬だけでいい』というのはいかがなものでしょうか。葬儀をしなければいけないと説教するつもりはないんですが、お坊さんを呼びましょうか、お花を供えましょうかと、ご提案しています」(柴山専務)。プランによっては、家族葬や親族葬を行ない、一晩付き添うことのできる部屋もある。お墓の管理ができない遺族の方には、共同墓による永代供養のお世話もしている。

 柴山専務は、「葬儀社がここまで考えないといけない時代なんでしょうが、故人の最後のお姿になりますので、私たちとしては大事にしたいと考えています」と話す。「単なる死体運搬人にはなるまい」(柴山専務)という言葉には、人間の死の尊厳を大切にする「葬儀社」としての矜持がこもっている。

(了)

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<COMPANY INFORMATION>
■(株)ラック
代 表:柴山 文夫
所在地:福岡市博多区東比恵3-14-25
設 立:1967年12月
資本金:6,575万円
TEL:092-473-0101
URL:http://j-lac.com/

<代表者 Profile>
sibayama_p.jpg柴山 佳夫(しばやま・よしお)
 熊本市生まれ。熊本大学法科卒業。西日本銀行に入行を経て、(株)ラックに入社。2010年から専務取締役を務める。趣味は、美術刀剣類鑑賞。


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