総選挙の時期がやってくる。なぜかぼくにまで出馬しないかと声がかかる。残念ながらぼく自身は政治に向いていない。好きなことは部屋に閉じこもって調べものをすることと、山に入って森の手入れをすることだ。ところが特技は人前でのスピーチだから困ったことになる。特技と好みが一致しないのだ。しかもぼくを有名人と勘違いする人もいる。ごく一部の環境マニアの中でしか知られていないのに。今回も辛くも逃れてほっとしている。
しかしそれでも選挙には必ず行く。それは「投票箱の民主主義」だからだ。投票しないことは白紙委任状を出すのに等しい。消費税増税などが今回の焦点のひとつになっているが、投票しないことは「払います」と言うのに等しい。もうひとつの焦点は「TPP」だ。要は貿易をアメリカの言いなりに変えるかどうかの選択だ。もちろん日本は独立国なのだから、自国の利益で判断すればいいだけのことだ。さらに今回は、原発の将来像も焦点化してきた。それを「どうとでもして」と言うわけにはいかない。自分の意志を伝える大切な手段だから選挙に行かなくては。しかしそれでも日本には投票に行かない人がたくさんいる。ヨーロッパでは投票率が90％近いのに、日本では下手すると投票率が半分にも届かないこともある。民主主義は投票率に比例するのだ。投票しないなら、どんなに無視して苦しめても心配ない。特に日本の若者が投票しない。『どうせ変わらない』と思って白紙委任するから何も変わらない。もし若者が投票したなら社会は変わるのに。
アメリカでは若者たちが「Rock The Vote」という運動をしている。「Vote」は投票だから「投票に行こう」という意味だが、「Rock」という言葉が「揺さぶる」という意味と同時に岩をよじ登る感じがしてとてもいい。1992年には若者の投票率を20％も伸ばし、それによって「投票に行かない若者たちの時代を終わらせた」と述べている。
＜プロフィール＞
田中 優 （たなか ゆう）
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。『シリーズいますぐ考えよう！未来につなぐ資源・環境・エネルギー①～③』（岩崎書店）、『原発に頼らない社会へ』（ 武田ランダムハウス）など、著書多数。
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