一方で日本の選挙はつまらない。いくら「みなさん投票しましょう」と選挙管理委員会に言われても、『都合が悪いから現状に文句あるヤツは投票するなよ』と聞こえてくる。選挙以上にひどいのが被選挙権だ。議員になろうとするとやたらカネがかかる。衆院選に立候補するには、供託金が小選挙区1人300万円、比例代表同600万円必要だ。アメリカ、ドイツ、イタリアなどは供託金がなく、イギリスやカナダでも10万円以下。韓国ですら100万円で、日本だけ突出して高い。しかも法定投票数に達しなければ没収されてしまうのだ。いまや貧しい人が半数近い日本では、その人たちの被選挙権を実質的に奪っているのと同じではないか。これでは金持ちばかりが優遇されてしまう。そして今回、脱原発を掲げる「緑の党」は資金不足で衆院選の候補者擁立を見送らざるを得なかった。
さらに政党交付金というものがあって、総額300億円を超える資金が政党に供与されるが、少数政党はもらえない。「国会議員数が5人以上、もしくは国政選挙での得票率が2%以上」がもらえる最低基準だ。そうすると新党が既成政党を破って出てくる可能性は低くなる。さらに自民党は「新党乱立防止法案」を提出した。2年連続して上の条件を満たさなければ政党交付金を出さないという趣旨だ。するとさらに選挙はつまらなくなる。
最大につまらないのは他国のようにアーティストが応援することを禁止していることだ。利益供与に当たるのだと。「あの人が応援するなら」と考えたくても、応援自体ができない。他国ではミュージシャンが音楽を提供したり、政策の問題点をパフォーマンスで知らせたりする。中南米の民主化にはその功績が大きかった。しかし日本では許されないから、結局のところ自分自身が元芸人やお笑いタレント、スポーツ選手ばかりが当選する。新しい社会には新しい選挙が必要だ。「Rock The Vote」、政治の揺さぶりに投票しよう!
<プロフィール>
田中 優 (たなか ゆう)
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。『シリーズいますぐ考えよう!未来につなぐ資源・環境・エネルギー①~③』(岩崎書店)、『原発に頼らない社会へ』( 武田ランダムハウス)など、著書多数。
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