中国共産党第18回大会の人事は、1年前にすでに決まっていたという噂がある。表面は穏やかであるが、内面はとても厳しい胡錦濤主席は薄煕来氏の重慶でのやり方を認めず習近平・李克強次期体制や指導部の障害となる長老支配も好まなかったと言われている。そこで、胡錦濤主席、温家宝総理、習近平副主席が協議をして次期集団指導体制のメンバーを選んだという噂である。真実のほどは定かでないが、その後の経過はこの噂のシナリオ通りになっている。
第18回大会を取材、帰国された「中国経済新聞」発行兼編集人である徐静波氏に聞いた。徐氏は5年に1度開催の中国共産党大会を第15回から今年の第18回まで連続して取材している。
――今回の第18回大会は、今までと比べて、どのような印象を持たれましたか。
徐 大きなポイントの1つは、胡錦濤主席が、「中国国家主席」(正式には2013年3月の全国人民代表大会で交替)、「中共中央総書記」、「中央軍事委員会主席」のすべての職責から離れたことだと思います。特に、中央軍事委員会主席から離れたことは注目に値します。江沢民前主席は、胡錦濤主席が誕生後も8年間、中央軍事委員会主席を離れず、8年後離れて以降も、軍関係の数々の主要行事に顔を出し、影響力を保持しようとしました。よく言われる「長老支配」という現象です。
今回、もし胡錦濤主席が同じように中央軍事委員会主席に留まれば、習近平次期主席は2人の長老(お父さんとお祖父さん)の影響力の下で政治を進めていかなければならなかったはずです。胡錦濤主席は自分が軍事委員会主席から離れることによって、今後の中国国家指導体制のルールを定めた(改革した)と言えます。簡単にいうと「長老支配」等による誤った政治体制を排除しました。江沢民前主席に対する強いメッセージでもあるわけです。
在任中、GDPの総額を4倍にした胡錦濤主席に対する国民の支持率は依然と高いのです。さらに、今回の「総書記報告書」でも、2020年を目標に、GDPと都市部・農村の1人当たりの平均所得を10年の2倍に引き上げることを提起しています。
――政治局常務委員「中南海トップ7」にならなかった方でも、かなり有力な方もおられます。この点についてコメントをいただけますか。
徐 数人います。例えば、李源潮氏(中央政治局委員)、汪洋氏(中央政治局委員、広東省委書記)などです。9人だった常務委員を7人に減らした影響もあると思います。削った常務委員の1つは宣伝担当のポストであり、もう1つは政治法律委員会(共産党の司法機関)のポストです。
李源潮氏は63歳ですが、汪洋氏はまだ55歳です。汪洋氏は次回(第19回大会)では必ず常務委員になると思います。また李源潮氏は来年、準常務委員(国家副主席)になると言われています。政治局常務委員会議にも参加できることになります。
多くの日本の報道は、○○派閥と何でも無理やりに紐付けしてしまう傾向がありますが、それは全くの誤りです。日本の政党の様な派閥は中国には存在しません。その理由は、そのようにして得られる恩恵が全くないからです。
中国の場合は、政治局員常務委員のポストは勿論、大臣級のポストも1回切りです。2回はありません。日本の場合は同じ人物が、防衛大臣、外務大臣等を派閥の持ち回りで経験することがありますが、中国ではそのようなことは絶対にありません。職責を全うして引退します。そして、その最終職務につくまでは、それぞれ遠く離れて地域を統括しており会うこともほとんどありません。
日本の様に選挙がありませんので"餅代"も必要ありません。キャリアを積んでいく過程で、たまたま上司と懇意になることは当然あります。しかし、それ以上でもそれ以下でもありません。太子党もその例外ではありません。
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