――胡錦濤主席の唱えた「和諧社会」から習近平次期主席の目指す「小康社会」(ややゆとりのある社会)へとキャッチフレーズが変わりました。中国が今後めざしていく社会とはどのようなものですか。
徐 党大会が終わり、習近平氏の総書記就任の記者会見がありました。演説原稿は自分で書いたと言われています。この原稿には、具体的な数字や政治目標は出ていませんし、歴代の指導者が唱えてきた政治スローガンにも触れていません。
国民の満足度をより高くする、生活レベルをもっとアップさせる、環境問題を解決する、子供の教育問題を解決するという平易な言葉を使い、このことが今後10年で、我々政治局常務委員7人の目標であると締め括っています。「人民のすべての欲望を満足させる」ことが私の役目と言っているのです。これは今までにない演説の内容であり、実現するためには、とてつもない能力と実行力が必要です。しかし、国民は多少の「驚き」とともにこの演説を大変高い評価で歓迎しました。
習近平総書記の就任演説(抜粋)
「重大な責任は、人民に対する責任である。わが人民は偉大な人民である。とても長い歴史の過程で、中国人民は自らの勤勉さ、勇敢さ、知恵によって各民族が睦まじく共存する素晴らしい国をつくり、時を経てますます輝きを放つ優れた文化を育てあげた。わが人民は生活を心から愛し、より良い教育、より安定した仕事、より満足のいく収入、より頼れる社会保障、より高水準の医療衛星サービス、より快適な居住環境、より美しい環境を待ち望み、子供達がよりよく成長し、より良い仕事とより良い生活が得られることを待ち望んでいる。素晴らしい生活への人民の憧れが我々の奮闘目標である。この世の全ての幸福は勤勉な労働による創造を必要とする。我々の責任は、全党、全国各族人民を団結させ、率いて引き続き思想を解放し、改革開放を堅持し、社会生産力をたゆまず解き放ち、発展させ、大衆の生産・生活面の困難の解決に努力し、共に豊かになる道を揺るがず歩むことである」
ちなみに「小康社会」(ややゆとりのある社会)とは、中国国民に聞くと、マイホーム、マイカーがあり、たまには海外旅行に行ける社会、日本で言うと1970年代のイメージに近いと思います。
今後も、国家としてGDPの成長率を重視していくことについては変わりありません。しかし、数字を作るために、無理な仕事、無理なプロジェクトを推進することはなくなってくると思います。それでは本末転転倒で結果的にマイナスになってしまうからです。地方幹部の評価もこの点を中心に見直されていくことになると思います。
「小康社会」実現の為に、「エコ文明の建設」が重要であるとも言っています。エコ文明とは、簡単に言うと環境問題を配慮した文明(グリーン文明)ということです。そして、さらに、一歩踏み込んで、国民、指導者の全てにおいて、汚職問題などを含めてきれいしようと言うメッセージも含まれています。「合理的な社会」作りを推奨しているのです。
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