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「維新銀行 第二部 払暁」~第2章 クーデター計画(35)
経済小説
2012年11月29日 07:00

<谷野頭取包囲網(35)>
 栗野からの電話を終えると谷野は役員室に向かった。
 谷野が扉を開け、
「お早うございます」
 と声を掛けながら入室すると、役員室には既に営業本部長の川中常務、審査担当の梅原取締役、事務部門担当の木下取締役、経営管理担当の小林取締役の4人が執務しており、全員が、
「お早うございます」
 と声を返して来た。谷野は自分の席におかれた稟議関係に目を通し、一段落したところで、小林取締役に頭取室へ来るように声を掛けた。

 2人になった谷野は、
bn_1.jpg「役員室では話せない内容だったのでここに来てもらったのだか、実は先程栗野会長から、『どうも体調が良くないので、任期途中であるが退任をしたい。そこで北野常務と川中常務を退任させる話を聞いたが、私が辞任することになったので二人を留任させたらどうか』との連絡があったが、君はどう思うかね」
 と、小林取締役の考えを聞いた。
 小林は、
「栗野会長の体調はそんなに良くないのですかね。入院したのは確かお盆明けだったので、それから数えると6カ月近くなりますよね。本人が任期途中の退任を申し出るというのは、よっぽど体調が悪いとしか考えられませんね」
 と、谷野の顔色を窺うように話した。
 谷野も、
「我々も本当のことを聞かされていないので詮索するしかないが、病状はよくないのかもしれないね。しかしそうであっても、任期を1年以上も残して途中退任を『はい、そうですか』と言うのも、川に落ちた犬を棒で叩くような気がしてならない。本人は電話で『退任の申し出をします』と2度も言ったが、それでも慰留した方が良いような気がするが、どう思うかね」
 と、訊ねた。
 小林は、
「2人が一緒に頭取、会長になったのに、たとえ病気であっても2年で片方が退任するということになると、事情を知らない人は、『病気を理由に辞めさせた』とか、『2人の関係悪化が原因』とか言うかもしれません。やはり、慰留した方が良いと思います」
と神妙な顔をして答えた。
 谷野は、
「その件は来週病院に行って慰留することにして、栗野会長は自分が辞任した上、北野常務と川中常務2人も退任すると混乱が生じる恐れがあり、2人を留任させたらどうかと言って来ているが、その辺をどうするかだね」
と、少し困ったような顔つきをしたが、
「小林君、太平洋産業から常勤監査役の要請を受けているが、北野君の名前は出していないんだろう」
 と訊いた。
 小林は、
「人選については現在検討中と言うことで、具体的には名前を出していません。先方も上場会社で決算月も同じ3月で一緒ですから、退任役員の人選が絡む事情も知っており、5月に入ってからでも構わないと言っています」
 と答えた。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。

▼関連リンク
・「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(1)


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