<庶民の体制への不満増大>
上海など沿岸部の大都市に比べて、経済発展が遅れた地方都市ではどうなのか。「ここ数年、人口のさほど多くない地方都市でも不動産開発をやって、実体経済を伴わないGDPの上がり具合だったように思う」と語るのは内陸部・貴州省の貴陽に勤務する日本人男性のビジネスマン。
GDPは伸びているのに、庶民の給料はその上昇幅ほどには上がっていない。庶民は、給料が上がらないのに、インフレで物価は高くなる。住宅、医療などの社会保障を十分に受けられずに、経済発展の恩恵を受けられない庶民の不満が増大している。
9月に巻き起こった史上最大規模の反日デモも、日本では大々的に報道されたが、「反日教育により反日感情があるのは事実ですが、そのほとんどが官製デモだった。現実には、現体制を批判するデモの方が多かった」と、内実は中国共産党への批判を交わすための反日デモだという見方を示した。
<第2の中国版ジャスミン革命はあるのか?>
11年の2月、チュニジアで起こったジャスミン革命に影響を受けた、中国版ジャスミン革命がインターネットで呼び掛けられた。
北京の大通り・王府井には一党独裁の打倒を目指してデモ隊が集まったが、警察が厳戒態勢を敷いていたため、大規模デモには至らず、アラブ世界で起こったように全土に広がることはなかった。党大会で習近平総書記が就任し、政治改革に否定的な政権体制になったとはいえ、今後、これに続く、第2次、第3次のジャスミンの波が来る可能性は否定できない。
前出の貴陽市で働く男性は「仕事柄、学生と話をしますが、その学生たちのなかにも、共産党員とそうでない学生にわかれています。学生たち同士で、自国の政治の話をするのにはアレルギー的な反応を見せます。共産党員の学生に、共産党の批判をしているのが見つかると、自分に不利益があるのではないかと考えているようです。地方には、学校でなくても、世代を超えて、共産党を批判できない空気がある。特に庶民の間で、腐敗や格差に対して不満が増大しているのは事実で、そのことをネット上でこっそりと批判はできても、リアルに立ちあがるまでにはもうしばらく時間がかかるのではないでしょうか」と、地方都市の民衆から改革の波が起こるのは、まだまだ先のようにも思える。
ただ、強権を維持してきた中国共産党が、成熟した都市の若者たちの、インターネット上で拡散する4億の世論を無視できないようになってきているのも事実だ。
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