中国共産党第18回代表大会の開催前、前任の江沢民氏が中央軍事委員会主席を引き続き務めたように、胡錦濤氏も留任して軍事権を掌握する「上皇」となるのかどうか、様々な憶測が飛んだ。しかし15日午前に開催された第１回中央委員会全体会議で、胡錦濤氏は中央軍事委員会主席を辞して習近平氏の就任を要求した。これは、今年69歳の胡錦濤氏が10年間中国の権力を掌握した後、すべての職務から身を引き、政治と軍の大権をすべて習氏に引き渡すという賢明な道を選び、中国最高指導者を中心とした政治民主制度の建設のために模範を示したとみられる。

■「老人干渉政治」を排除
　今年３月、温家宝総理は全人代終了後の記者会見で「中国は政治改革が必要だ」と呼びかけた。注目されたのは、温家宝総理が慎重に言葉を選びながら「政治改革は中央の指導体制から着手しなければならない」と明言したことだ。これは江沢民氏の「老人干渉政治」という尋常でない中国政治体制を打破することを意味する。今年85歳の江沢民氏は最後の職務である中央軍事委員会主席を８年務めた。しかも今年夏まで中国国防部（中央軍事委員会）内に自身のオフィスまで確保していた。今回の党代表大会を含む中国の重大な政治活動のなかで、江氏は中国政治の「後見人」を自任し、胡錦濤氏の背後にいて胡錦濤氏執政の「指導」をしてきた。中国には老人を敬う優れた伝統があるが、江沢民氏の多くの行為は胡錦濤氏の障害となっていた。しかし、胡氏は長期にわたってこれに耐えてきたのだ。

　もし、胡錦濤氏が江沢民氏同様、中央軍事委員会主席の職務に留まったなら、習氏には父（胡錦濤）のみならず祖父（江沢民）の、２世代の権力の干渉を受けるのではないかと多くの人が心配していた。このことは習氏の執政に多くの不利な要素をもたらすことになる。そのため胡錦濤氏はすべてを辞し、習近平氏のために今後の執政の障害を打破したのだ。「父」として政権に干渉することはない。「祖父」は言うにおよばずだ。

■習近平氏執政の障害を打破
　習氏はこれを高く評価し感激した。16日の中央軍事委員会の会議で、中国軍の高級将校たちに対し「胡主席は党、国家、軍の全面的な発展を考慮し、自ら中国共産党、中央軍事委員会主席を辞し、１人のマルクス主義政治家・戦略家として高邁かつ高潔な行動を実現した」と述べた。

　胡錦濤氏もまた習近平氏の能力と人格を高く評価し、「習近平同志は総書記として、また中央軍事委員会主席として適任だ。彼は若いときに軍隊で仕事をし、地方では地方の軍の仕事をしていた。中国共産党第17期中央委員会第５回 全体会議（五中全会）では中央軍事委員会副主席を務め、直接軍の委員会の仕事に関わった。党中央が習氏の軍事委員会主席に決定したことは非常に適切であった」と述べた。

　胡錦濤氏は政治人生の最後の時に、自身がすべての職から退くことで、老人干渉政治の弊害を一掃した。これは現政府が中国の歴史上に与えた最大の影響かもしれない。
　18大会の人事は中国の体制の特徴でもある。１人の人間が決定するのではなく、上層部の協議による結果ということである。

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