西日本シティ銀行の専務Cに最後通告を突きつけられた中野氏は戸惑った。西銀に逆らえば父親から譲り受けた会社までが潰れてしまう。大事な従業員たちが露頭に迷ってしまうと判断。最終的に西銀の言いなりになる形で、監査法人トーマツに対し侘びを入れ、契約解除を撤回する旨の通知(PDF参照)を発送した。西銀主導で開催された4月19日のバンクミーティングでは、「すべての責任は私にあります。西銀には一切の責任がありません」などと銀行側があらかじめ作成した台本どおりに銀行を擁護する発言を求められ、各金融機関に謝罪せねばならない立場に追い込まれた。
<事実なら重大なコンプラ違反か>
西銀が、中野氏から株式の無償譲渡を受ける相手方として、指名したのは、(株)ドーガン・アドバイザーズの子会社(株)エス・ケー・イーである。しかし、(株)さかえ屋と全く利害関係がなく、経営支援の裏付けもない一企業が株式を無償で取得し、保有しているのは不自然な処理といわざるをえない。
弊社は西銀に対して取材申し込みを行い、質問状を送ったものの、「個別企業については対応できない」という理由で取材拒否。しかし、2012年12月末まで金融円滑化法が延長される中、融資を受けてたった半年間で提示する条件を飲むことができなければ即座に返済を求めることは、同法の趣旨に大きく反するものといわざるをえない。行員の土下座強要発言を含め、もし事実ならば重大なコンプライアンス違反がいくつも存在すると思われる事案である。西銀にはこの疑問に対し、十分な回答を行なう義務があるのではないだろうか。
中野氏は最後にこう述べた。「被害を受けるのは私たちだけで十分だ。このようなことがまかり通る世の中にはなってほしくない」。
旧経営陣による粉飾が事実であったとしても、すべての役職を追われ、株式を「没収」されるという中野氏の払った代償は大きすぎるものではないのか。いかなる理由があるにせよ、西銀主導で行なわれた役員交代劇は本当にさかえ屋のためのものだったのか、もう一度、検証する必要がありそうだ。
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