<鹿児島県では約6人に1件、いじめに遭遇>
「いじめが直接の原因ではない」(出水市教育委員会、以下「市教委」)とされた、鹿児島県出水市の中学2年生(当時)の女子生徒の自殺事故。文部科学省が11月22日に発表した、「いじめ問題に関する児童生徒の実態把握に係る緊急調査」の結果は、市教委の調査結果に疑問符をつけざるを得ないものであった。
全国の国公私立学校を対象に、8月1日から9月22日まで(高等専門学校、高等専修学校は8月23日から9月22日まで)行なわれた同調査で、2012年度当初からのいじめの認知件数は14万4,054件であった。このうち鹿児島県は3万877件で、千葉県1万5,793件に約1万5,000件もの差をつけて全国ワースト。内訳を見ても、小学校2万1,504件、中学校6,006件、高校3,279件、特別支援学校88件と、すべて全国ワースト(特別支援学校は静岡県と同数)。約6人に1件の割合でいじめに遭遇している計算だ。
データからも、出水市で自殺した中2女子生徒が、いじめに遭遇していた可能性が高い。さらに関係者の証言などもあり、遺族が「いじめが原因」と考えざるを得ない鹿児島県における教育現場の実態が明らかになったと言えよう。「いじめが直接の原因ではない」とする市教委だが、いまだ開示を要求する遺族に対してアンケート結果を頑なに公開していない。
<公文書開示まで約2カ月間>
NET-IBでは9月下旬に、出水市長および出水市教育委員会あてに、「平成23年9月1日に発生した出水市立中学校の女子生徒(当時中学2年生)の自殺事故に関するすべて」として、公文書開示請求を行なった。これに対し出水市は、まず、「出水市長のもとには要求された文書が存在しない」と回答。一方、市教委からは1カ月ほどが経って、「公開できる会議録が3枚程度ある」との回答が寄せられた。
写しの代金として220円を支払ってからさらに1カ月近くが経って、市教委から封書が送られてきた。それが画像の「出水市臨時教育委員会会議録」(平成23年第4回・第5回)の一部である。ご覧のとおり、会議録とはいっても、墨塗りされた出席者の名簿だけで、会議の内容についてはまったくわからない。〝約2カ月〟もの間、市教委が公開する文書について知恵をめぐらした結果である。
さらに、市長のもとに女子生徒の自殺事故に関する文書がないとすることにも甚だ疑問を感じる。出水市長は市議会で9月18日、市議から同事故に関する質問を受けて答弁している。公立中学の学校教育に関する極めて重大な問題が、口頭だけの説明で市長になされるということがはたしてあるのだろうか。こうした経緯をふまえると、同事故に関する出水市および市教委の〝極力情報を出そうとしない〟姿勢には、『いじめワースト県』となった根源的問題を感じる。
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