――「中南海トップ7」と日本との関係についてコメントを頂けますか。
徐 この質問の回答は、今いちばん難しく、現地においても、取材しにくい内容です。ただし、私はこの体制は今中国で考えられるベストな体制のような気がします。それは、全てにおいてと言う意味であり、もちろんその中には「日中関係」も含まれます。7人が協力しあって集団指導体制がとれるということです。先の薄煕来氏のように、独走や暴走する人間がいません。そして全員が実務派です。
外交に関して少し触れれば、李克強氏は知日派と言われています。「国民の生活が第一」党の小沢一郎代表の家に2週間ホームスティしたことがあります。今でも、懇意にされているとも聞きます。日本のことをよく理解されていると思います。
習近平氏は、少なくとも2回は日本を訪問しています。1回は、福建省知事時代に長崎を訪問、副主席として昨年来日したのはみなさんがご存知の通りです。日本には、いい印象を持っているとも聞いています。日本と協力関係の構築は可能だと私は思います。
張高麗氏も、王岐山氏も何回も訪日しています。特に張氏は山東省、広州、深圳と日系企業との関係も深く、日本企業の多くのトップと交流があります。特に、トヨタの豊田社長とは親しいという話も聞きます。日本のことをよく理解されていると思います。
――最後に、新たに政治局員になった25人に関してコメントを頂けますか。
第18期中央政治局委員(25名)
習近平、馬凱、王岐山、王滬寧、劉雲山、劉延東、劉奇葆、許其亮、孫春蘭、孫政才、李克強、李建国、李源潮、汪洋、張春賢、張高麗、張徳江、範長竜、孟建柱、趙楽際、胡春華、兪正声、栗戦書、郭金竜、韓正
徐 将来の話になるので、想像の域を出ませんが、胡春華氏(内モンゴル自治区委書記)、汪洋氏(広東省委書記)、孫政才氏(吉林省委書記)は次期政治局常務委員の有力候補と言われています。さらに言えば、今回政治局員には漏れているのですが、若手有望株で注目されているのが、周強氏(湖南省党委書記)です。38歳の若さで李克強氏から共青団トップの座を引き継いでいます。
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【後記】
今、現れつつある中国は、古い王朝の再興でもなければ、従来の欧米型の大国とも違う。新しい中国である。しかし、その新しさを理解するためには、従来の分析手法を生かしながら、新しい現実を深くかつ広く捉える努力が必要となる。
日本人は「自分達と異なるもの」への対処のあり方がとても不得手である。「日中」、「日韓」問題は勿論「米軍駐留問題」等もそれに該当する。我々は論理や感性を共有する仲間を「身内」と捉え、何も言わないでもわかり合えると勝手に思いこむ。時には、実は最初から利害関係も異なり、明らかに身内でないものであっても「身内化」して考えたがる傾向さえある。そして、身内だと"勝手に思っていた"相手が自分にとって不都合な行動に出ると裏切られたと思い逆上する。
これでは、国際社会では、子供と同じで全く通用しない。もはや、同じ日本人でも世代が違えば、火星人と思える若者も多いのだ。「まったく議論もせずにわかり合える仲間」など存在しないと考えることが出発点である。国が違えばなおさらである。特に日中は「一衣帯水」でありながら、否、あるが故に、無病息災というわけにはいかない。問題を抱えながら、全体として上手くやっていけるように、大局的見地から双方が真剣に叡智を出し合う時がきている。
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