<最短距離ではなかった要因>
復興予算を、復興に向けての最短距離で向かう方法は、知恵を絞れば、もっと存在したはず。たとえば、まず、「被災地の復興に直結することにしか使えない、計上しない」(復興予算立ち上げの理念を思えば当たり前のことだが...)という大前提を作るだけでも事務手続きは、ずいぶんと少なくすることができたはずだ。本来なら、それが暗黙の大前提としてあるべきだったが、「こじつけ」を可能にしたことで、逆にそれにともなう事務手続きも増えた。各省庁が復興予算を「何に使ってやろうか」と画策、知恵を働かせる余地を与えた。今回のように国民から批判を浴び、新仕分けをしなければならない羽目になった。
復興まで最短距離で行くには、従来のやり方ではなく、被災地目線でのルール作りから始めるべきだった。復旧・復興に向けて「何を行なうべきか」をリストアップし、被災地の完全復興という目標点に到達するために「行なうべきこと」を段階ごとに列挙したうえで、吟味、ブラッシュアップし、それら「被災地にとって本当に必要なこと」に予算を付けていくという方法のほうが、より適していたのではないだろうか。
こと復興に関してだけでも、省庁の枠を越え、一丸となるべきだった。それができないところに、日本の抱える構造的な問題点が潜んでいる。
<実効性はあるのか?新仕分け>
間接的なところに予算を使っている余裕はない。財務省の出している平成25年度予算の概算要求組替え基準についての稿に、「各省大臣は、被災地の要望等を踏まえつつ、津波・地震被害や原子力災害からの復旧・復興に直結するものなど、真に必要な経費を要求する」と、わざわざ書いてある。東日本大震災のような緊急時、非常時には、上記のことは、復興に向けての仕事に携わる政治家や官僚は、暗黙のうちに、了解、合意しておくべきである。それができないのはなぜか。各省庁の担当者が、被災地のことを見ずして、予算を獲得に走ったということもある。予算編成のシステムを改善する時機が来ているのではないか。
16日に行なわれた震災復興関連の新仕分けでは、法務省の計上していた「被災地域における再犯防止施策の充実・強化」、厚生労働省の計上していた「パーソナル・サポートモデル事業の実施に必要な経費(ハローワークの職業相談員の配置)」などに見直しの評価が下った。新仕分けの手法としては、ソーシャルメディアの動画共有サイト・ユーストリームやツイッターを利用して、多くの国民が見ることができるようにするなど効果的だった。それらの議論を踏まえ、政府は復興と関連が少ないと指摘された168億円分の執行を停止するなど、改善の兆しは見えている。だが、先端農業事業費として50億円を13年度の概算要求をした経産省では、被災地に限定されても50億円を要求するなど、削減なしの予算獲得に懲りない面々を見せている。
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