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「維新銀行 第二部 払暁」~第2章 クーデター計画(40)
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2012年12月 6日 07:00

<谷野頭取包囲網(40)>
 局長の話が終わるのを待っていた小石原理財部長が、
sora_3.jpg「この件について部内では、銀行が組織的に保険勧誘をしており、保険業法違反で命令書を出すべきだとの声も上がりました。また維新銀行の人事が、一保険会社の女性外務員によって歪められていたとするならば、由々しき問題となります。もしそれが事実であれば銀行法にも抵触することになります。現在谷本氏は頭取から相談役に退いておられますが、頭取在職中にそのような事実があれば、当然責任を負ってもらうことになります。次に第五生命の山上外務員の保険勧誘が維新銀行ぐるみの保険勧誘と認定されれば、法人としての維新銀行に対する保険業法違反が問われるのは言うに及ばず、谷本頭取を頂点として先程名前の挙がった9名の取締役のうち、山上外務員の保険勧誘にどの程度関与したかによって、個人も保険業法違反の罪を問われることになります。
 維新銀行には現在2件の業務改善命令を出しており、その上に更に業務改善命令を出すことになると、調査の結果次第で一部の支店に営業停止命令を出すことにもなりかねません。
 しかし先程話したように、谷野頭取が2件の不祥事件を受けて、綱紀粛正の一環として全行員に対し、第五生命の山上外務員の保険勧誘への協力を止めるように指示していることや、審査担当役員を通じて第五生命の山上外務員が持ち込む保険料ローンの取り組みを禁止したことを考慮して、今回はあくまでも自主調査としました。
 もし谷野頭取が赤字決算による不良債権処理を放置していたり、第五生命の山上正代外務員が維新銀行を舞台に保険勧誘をしているにもかかわらず、見て見ぬ振りをしていたなら確実に3件目の業改善命令を出していました。谷野頭取になって維新銀行は変わってきています。我々も谷野頭取の改革を前向きに評価していますので、今後も積極的に改革に取り組んで下さい。今回の処置は谷野頭取の手腕に期待した影山局長の配慮です」 
 と諭すように話した。

 谷野と小林は影山局長達に向かって深く頭を下げて中国財務局を辞した。
 谷野と小林は安芸本部差し回しの車に乗ると、谷野は運転手に直接広島駅に行くよう伝えた。駅に到着すると谷野は運転手に、
「今日は本店で用事があるので安芸本部に寄らずに、直接帰ったと北野常務に伝えて下さい」
 と言うと、足早に駅の構内に消えていった。
 谷野と小林の二人は無言のまま改札口に向かっていたが、喫茶店の前を通りかかると、どちらからともなく自然に足が止まった。コーヒーを注文した二人は、お互いに
「これからが大変ですね」
 と言ったまま、いよいよ谷本と対峙しなくてはならない状況に思案を巡らすことになった。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。

▼関連リンク
・「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(1)


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