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日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ

日本経済はなぜ再生できないのか!(後)~日銀は通貨や物価の番人ではない!?
日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ
2012年12月12日 07:00

<日銀は"銀行の番人"で、通貨や物価の番人ではない!>
 ――規制に関してはよく分かりました。次に、円高、デフレに問題に移りたいと思います。リーマンショック後、主要国で景気が停滞しているのは日本だけです。なぜですか。

 原田 この答えは簡単です。一言でいうと、日銀が真面目に円高を阻止しようとしていないからです。日銀は、"銀行の番人"であって、通貨や物価の番人ではないからです。

 90年代から今まで不況が続いていたために、銀行は貸出先が無くて困り、大量に国債を購入しました。今、銀行は限りなくゼロに近い金利でお金を集めていますが、国債に入れておけば1%程度の利回りがあります。仮に、0.1%の金利でお金を集め、1%の利回りがあれば、0.9%の利鞘が稼げます。0.9%の利鞘があれば銀行経営はなんとか成り立つでしょう。ところが、円安になり、物価が上がり、景気が回復すると、やがて金利が上がり、国債価格が下落します。
 そうなると、たくさんある銀行の中には、持っている国債の価格が下がって窮地に追い込まれるところもあるでしょう。日本経済はどうでもよく、銀行が可愛いのでしょう。日銀職員も官僚ですから、その体質は霞が関官僚と同じです。

 "原子力村"は福島原発事故で多くの国民の知るところとなりましたが、ここには"日銀村"があります。

 ――日銀が"銀行"の番人であって、通貨や物価の番人ではないとは驚きです。同時にその倫理観の欠如にはがっかりします。世界のどの国でも同じ状況なのですか。

harada.jpg 原田 勿論どこの国でも中央銀行の総裁の大きな役割の一つは銀行の番人です。しかし同時に「自国の経済をよくしていかなければいけない」という使命感を持っています。良くできなければ、すぐ責任が問われます。これは倫理感もさることながら、システムの違いです。日本の政治家の多くはこのシステムが理解できていません。

 世界の中央銀行総裁は、政治家が選びます。しかし日本は形式だけは政府が選んだ様になっていますが、実は日銀が選んでいます。

 アメリカで言えば、大統領はFRB総裁の責任で景気が停滞したのであれば、次の大統領選に影響するので、総裁を批判するでしょう。そもそも、FRBの目的は、物価の安定と雇用の最大化だと法律に書いてあります。雇用の最大化とは、FRBは景気にも責任を持つということです。また、FRB総裁に指名される人々は、自ら、銀行も大事だけれど、もっとも大事なのは物価の安定と景気だと自ら考えているのです。

 最近では、自民党の安倍総裁はじめ政治家の中でも金融政策を理解できる人が増えました。日銀と協定を結んで、2%のインフレ率を目指して金融政策を行わせると言っています。日銀の独立を規定した、日銀法を改正することも視野に入れると言っています。
 自民党だけでなく、民主党、維新、みんなでも、多くの政治家は金融政策の意味を理解できていると思います。ただ、安倍総裁の金融緩和論に民主党が反対しだしたのは、政治はゲームだからです。競合党が言いだした政策には、良いと分かっていても賛成できません。安倍総裁が総理になられて大胆な金融緩和に踏み切れば、円高は収まり、デフレから脱却して、景気は良くなります。そうなったら、安倍自民党総裁の人気は高まり、長期政権となるでしょう。ただでさえこれから大変な民主党にとって、自民党主導の金融緩和は困ります。

<世界の中央銀行総裁と同じ様に舵をとりなさい!>
 ――日本経済再生の為に、今すぐにやらなければならないことは何ですか。

 原田 それは円高の阻止です。リーマンショックが起こり、世界各国の中央銀行総裁は通貨の量を2倍~3倍に増やしました。アメリカもEUも中国も韓国も大幅に増やしました。

 しかし、日本は、全く増やしていません。為替レートは、通貨と通貨の交換比率なので、ある通貨が増えて、ある通貨が増えなかったら増えなかった通貨の価値が上がるのは当たり前の話です。つまり、円高になり、デフレにもなります。

 金融緩和をすると景気がよくなり、失業率も下がりますが、当然やり過ぎるとインフレになります。この点が、この政策を進める時の反対派の言い分ですが、2%インフレ目標とは、2%を超えたら金融を引き締めるとあらかじめ決めていることです。ですから、決してハイパーインフレなどにはなりません。

 日銀が「世界の中央銀行総裁と同じ様に舵をとる」ようにするのが一番簡単かつ効果も大きいと思います。輸出が伸びて、失業率が改善され、名目GDPが増えて、税収も増えます。
 円高を阻止できれば、次の一手が打てます。輸出産業も何とか息を吹き返すでしょう。最近大問題となっている地方自治体からの大企業の工場引き上げも一息つくでしょう。

 韓国の通貨は一時日本の半分の価値になりました。半分になったら、いくら何でも国際競争はできません。パナソニックやシャープの経営者にも問題はあると思いますが、通貨レートがいきなり半分になった国と勝負せよというのも酷な話で、今回の電子・電機産業の大不況を招いたのは、過度の円高を阻止できなかった金融政策に責任があると思います。

<円高、デフレ阻止から全てが始まる!>
 ――これまで、円高、デフレ、規制に関してお話をお聞きしてきました。今、ちょうど選挙戦です。この雑誌が出るころには、勝敗が決していると思いますが、どの党が勝っても進めなければならない政策をエコノミストとして提言願いますか。

 原田 私は以前、「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)という本を書いたことがあります。そこで得た結論は「日本国の原則」は日本の経済発展は自由の故であり、明治維新後、戦前、戦後、戦後復興、その後も通じて、官僚統制が成功したことはなかったということです。

 選挙でどこが勝つにしても円高阻止、デフレ脱却は喫緊の課題です。自民党の安倍総裁が、日本銀行に金融緩和政策を採らせれば、景気が回復し、失業率が低下します。そうなれば、安倍自民党総裁に国民の支持が集まり、TPPへの参加を含む様々な改革も可能になります。

 地方交付税の一括補助金化も進めて欲しい政策です。地方の首長と人々を信じることです。一括補助金化とともに、5%程度の減額ができると、1兆~2兆円程度の予算が削減できます。

 大企業の工場が無いと地方経済は回りません。円高を阻止できれば、工場の閉鎖や流出に歯止めがかかります。企業は、中国以外、ベトナム、ミャンマー、インド等に進出を考えていますが、日本ほどインフラは整っているところはありません。

(了)

≪ (中) | 

<プロフィール>
harada.jpg原田泰(はらだ ゆたか)
1950年生まれ。
1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、ハワイ大学に留学(経済学修士)、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミストなどを経て、現在早稲田大学政経学部教授兼東京財団上席研究員。

著書は、『震災復興-欺瞞の構図』『日本はなぜ貧しい人が多いのか』『世界経済 同時危機』(共著)『日本国の原則』(石橋湛山賞受賞)『人口減少社会は怖くない』(共著)『昭和恐慌の研究』(岩田規久男氏他共著、日経・経済図書文化賞受賞)『都市の魅力学』『日本の失われた十年』『日米関係の経済史』など多数。


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