自民党・安倍晋三総裁が街頭演説を終えた後の午後５時過ぎ、すぐ近くの警固公園で、日本維新の会による街頭演説が始まろうとしていた。多くの人々が、代表の石原慎太郎前東京都知事と代表代行の橋下徹大阪市長の二枚看板が来ることを聞きつけて集った。公園の様子をビルの上階から見ていた、付近の商業施設によると、石原・橋下氏が演説を始めた頃をピークとして、敷地面積約１万m2の公園の４分の１が人で埋め尽くされていたという。
「暴走老人の石原です」から始まった石原氏の街頭演説。石原氏は「日本にはまだまだ力がある」として、円高の理由を「国の借金は938兆円あるが、国民の金融資産は1,515兆円もある。だぶついている金が使えないのは、役人、政治家がバカなんだ」「アメリカ人はドルを信用していないから円を買う」「21世紀に入って日本人が自然科学の分野でとったノーベル賞はヨーロッパ全体と同じ」「サムスン（韓国）は東芝の技術で大きくなった」などと語った。
さらに、石原氏は「本気で直さなければ、どんどん孤立する」として憲法の改正や、「この国にはバランスシートがない」として国の会計制度見直しの必要性を訴えた。最後に、「平成の牛若丸」とする橋下氏への期待を語り、福沢諭吉の言葉「立国は公にあらず、私なり」を引用し、聴衆に独立自尊の姿勢を持つようにと結んだ。
続いて行なわれた橋下氏の演説は30分ほど行なわれた。「日本国民の多くが自民党の政治に戻そうとしているらしい」「みなさんがNOを突きつけた国会議員が復活してくる」「公約を見ても何ら自民党の政治は変わっていません」などと切り出した橋下氏。大阪府知事や大阪市長として取り組んでいる行財政改革や教育改革の経験から、政治・官僚・産業の一体となった社会構造、官僚の天下り、学力低下を招いたゆとり教育をもたらしたのは自民党の政治だと語った。そのほか、民主党や自民党など既成政党の新聞広告・テレビCMは、政党交付金すなわち税金から作られているなどとして批判を強めた。
街頭演説は、福岡１・４・５・６区で立候補している同党公認候補の演説から始まった。それぞれに初の国政選挙に対する意気込みを語った新人候補だが、演説に対する拍手は集まった聴衆の数からすれば寂しく感じられた。しかしながら、寒いなかで計１時間ほど行なわれた演説を、聴衆のほとんどが最後まで聞いていた様子からは関心の高さがうかがえた。また、聴衆の顔ぶれには若年世代も多く含まれており、橋下氏の言う「フワっとした民意」の実体のように感じられた。
既成政党への不信感が、「第３極」といわれる新興勢力への期待に転化した昨今の政治情勢で迎えた今回の衆院選。「政治の主役は、役所の言う通り、有権者のみなさん」として「100票、200票集めるご努力をお願いしたい」として、支持の拡大を求めた橋下氏。石原、橋下両氏のテコ入れが福岡の地でどのような影響をもたらすのか。16日の投開票で明らかになる。
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