＜守り続けたい「博多座ブランド」＞
　しかし、集客がすべて、というわけではない。歌舞伎のように博多座だからこそ公演できる、という作品も大切にしていかねばならない。博多座が創立したとき、市民からは「東京の歌舞伎座に代わる劇場が福岡にできた」、と喜ぶ声があがったものだ。現在、歌舞伎の興行成績は全国的に見ても良いとは言えないのだが、この灯は消すわけにはいかない。また、博多座は品格がある、というブランドイメージも落とせない。創業理念にもある「満足してもらえる良い公演を行ない、地域文化の発展のために尽力」するためには「いかに博多座らしく興行成績を上げるか」を考える必要がある。

　博多座らしさとは何か、と考えるとき、思い出すのは博多座創立までの歴史だ。きっかけは1989年、福岡市政100周年を記念して開催された「アジア太平洋博覧会」だった。同博覧会の成功が九州に演劇文化を復興させることができるという判断につながったのだ。翌年後、同跡地で行なわれた劇団四季「キャッツ」のロングラン公演で判断が確信に変わり、福岡市の演劇専用劇場への建設につながる。同時期、博多区の下川端地区（現リバレイン地区）の再開発が進み、その再開発計画と先ほどの演劇専用劇場の設計計画の方針が合致。下川端地区に劇場博多座が99年２月に誕生した。

　このような背景を背負って立つ博多座は、地域文化のためも発展しなくてはならない使命がある。創業理念のなかにも「市民劇場として、文化の発信基地となる」という一文がある。地元商業地域への貢献も視野に入れたい。下川端商業地域には、115億円の経済効果をもたらしているという結果も出ているのだ。支えねばならない。

＜演劇界の未来を視野に入れて尽力＞
　博多座が文化の発信基地になるには、やはり自主制作企画は欠かせないのではないか、という問いに、芦塚社長は次のように答える。
　「自主企画公演は、今後も続けていきますよ。九州出身の俳優の登用や地域のPRを自由に行なうことができますからね。俳優さんたちも協力的ですよ。PR活動にも積極的に動いてくださる。次回の自主企画公演の主演は、熊本出身のコロッケさんなので、熊本県庁に表敬訪問に行き、快く受け入れていただきました。不況の時代で経済的援助は期待できない、と言われていますが、その分、精神的援助は非常に多く受けています。がんばってほしい、中洲川端から演劇の灯を消さないでほしい、と。それが私たちの行動源になっています」と語る芦塚社長の表情は、輝いている。
　自主企画で、経費を削減するノウハウを学んだことによって、興行会社との交渉も自信をもって行なえるようになった。大物俳優に対しても、大手興行会社に対しても、出演料などをできる限り抑えられるように交渉し、承諾を得ている。経費を抑えることに協力してもらう。これも経済的援助の１つだろう。「演劇業界では今、お互いに経済的に苦しい時代だということをわかり合えたからでしょうね。皆、協力的になっています」（芦塚社長）。

　これからの経済は、自社の利益だけではなく、業界全体・地域全体のことを考えてこそ成り立つのかもしれない。このような時代にあって大切なのは、「本当に良いものを地域発展のために発信していきたい」という信念を持つことだろう。信念に共感した人が何かしら援助の手を差し伸べてくれる。自らの壁を破って外に交渉に出たことの成果を、今、芦塚社長は噛みしめている。

　博多座から新しい演劇が生まれ、育っていくための企画も今後考えていきたいと夢も膨らませる余裕も見せる。来年は開場15周年を迎える博多座。どのような節目の年を迎えるのだろうかと、多くの目が行き先を見守っている。

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＜COMPANY INFORMATION＞
■（株）博多座
代　表：芦塚　日出美
所在地：福岡市博多区下川端町2-1
設　立：1996年７月
資本金：11億2,500万円
ＴＥＬ：092-263-5874
ＵＲＬ：http://www.hakataza.co.jp

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