「悲願達成」――。当確の知らせを聞いた元県議の自民・新人の井上氏は午後8時30分頃に選挙事務所に姿を見せ、集まった300人の支持者の前で「ようやく福岡1区に錦の御旗を立てることができた。ありがとうございます」と神妙かつ紅潮した面持ちで勝利宣言の声を上げ、大柄な体をすくめながら深々と頭を下げた。同席した長女である遙さん(18)に花束を手渡されると、ようやく選挙戦の終わりを確認したかのような安堵の笑みがこぼれた。
福岡の中心部である博多区を地盤とした福岡1区はこれまで、前職が元環境相の松本龍氏をはじめ、民主党が過去5回議席を確保し、自民党は一度も勝ったことがない選挙区。しかし、相次ぐ失政が浮き彫りとなり、強い逆風を受ける与党・民主に対し、自民党福岡県連は当初、古賀誠元幹事長の秘書であった新開裕司氏を擁立する予定だった。しかし選考過程の見直しが入り、「当選可能性のある人を前提に、安倍晋三総裁の総合的な判断」として、新開氏を比例九州ブロックに立てる代わりに、祖父から3代続いて福岡県議を務めたほか、博多祇園山笠振興会相談役や博多松囃子振興会相談役など、地元博多に根差した活動をしていた井上氏を送り込んだ。
結果、この「作戦」は成功。9万6,706票と保守層を中心に幅広い支持を集め、次点のみんなの党新人・武内今日生氏(4万5,014票)を大きく引き離す得票数を集めた。井上氏は「厳しい戦いで、勝てる手応えは当選が確実になるまで分からなかった。支援者はじめ、通常2カ月の作業を1カ月で作業をして頂いた事務所スタッフにも感謝している」とし、「保守本流の待望論があったのが大きかったのでは」と勝因を分析した。
また初の国政進出への抱負については「困難に立ち向かうことを喜びと思い、安全で安心に暮らせる国家を築きたい」と力強く話した。深夜には井上氏が慕い、福岡8区で再選された麻生太郎元首相のほか、高島宗一郎福岡市長も当選のお祝いに駆けつけた。事務所の外では興奮冷めやらぬ、支持者の万歳三唱の声が鳴り響いていた。
【2012衆院選・福岡1区 開票結果】
・自民党・新人 井上 貴博 氏(50) 9万6,706票 当選
・共産党・新人 比江嶋 俊和 氏(65) 1万5,992票
・みんなの党・新人 竹内 今日生 氏(38) 4万5,014票
・無所属・新人 犬丸 勝子 氏(57) 5,762票
・民主党・前職 松本 龍 氏(61) 3万6,632票
※記事へのご意見はこちら