<第3極も巻き込んだ爆風>
一部のメディアでは、各界著名人などに今回の衆院選についての見方を「○○選挙」と銘打ってもらう企画があったが、結果を見れば、まさに本シリーズのタイトル通り、民主党の自爆となった選挙であった。しかも、その爆風は、戦いへの準備時間を与えないという点で第3極勢力を巻き込み、自民党を利する形となった。
福岡では小選挙区で立候補した10人の前職がすべて落選。九州比例ブロックの3議席圏内も望めないことから、早々と店じまいする陣営も珍しくはなかった。今回の選挙戦において、民主・前職が立った小選挙区では、自民前職が強大な福岡8区を除き、日本維新の会、日本未来の党、みんなの党といった第3極勢力の候補者が参戦。無党派層のみならず民主支持層の票も奪われた。
民主党の県内候補者の惜敗率は、最も高い稲富修二氏(2区)で約65%。以下、緒方林太郎氏(9区)の約64%、城井崇氏(10区)の約63%と続き、ほか4人が約48%から55%までの間にひしめき合った。小選挙区導入以降、5期連続当選していた1区・松本龍元環境相はなんと約37%。「民主の牙城」と言われた1区が、民主党への逆風のすさまじさを伝える象徴区になった。
なお、九州で比例復活当選した民主党の面々を見ると、大串博志氏(佐賀2区)、原口一博元総務相(佐賀1区)、高木義明元文科相(長崎1区)と、すべて第3極不在の選挙区であった。復活できなかった民主党候補者たちの恨み節が聞こえてくる。
<劇的転換をもたらした現行選挙制度>
民主党が308議席を獲得して政権交代を果たした2009年の衆院選から、極端に民意の針は振れた。そうした結果を招くのは、小選挙区で1人ずつしか選出されない現行選挙制度の特徴であり、「次点以下の候補者の得票が『死に票』になる」との批判もある。
また、比例九州ブロックでは、民主党が3議席を惜敗率が約88~89%(得票数:6.3万~8.2万)の候補者3人でわけあったのに対し、日本維新の会では、比例単独1位を除いた3議席を惜敗率が約47~49%(得票数:3.6万~4.2万)の3人でわけあった。得票数の低い候補者の復活当選は衆議院の比例代表制の問題点として見られている。
候補者のPRにおいて政党有利にはたらく公職選挙法の見直しも求められる。政見放送は政党の候補者しか行なえない。選挙期間中(公示・告示から投開票前日まで)のインターネット利用は禁止されているとの見方が大勢を占めるが、政党の政治活動の目的によるHP更新は可で、個人の場合は「選挙運動と紛らわしいので不可」(総務省)という。実際に、政党幹部が選挙期間中の街頭演説などで選挙運動を行なっていることは周知の事実なのだが、HPの内容に書かれていなければいいらしい。
「金がないからツイッターしかない」とは、日本維新の会・代表代行の橋下徹大阪市長。今回の総選挙でも、国から政党交付金を受けている政党は、テレビCMや新聞広告などを使った大々的なPRを展開した。政党に属さず、資金もなければ、政党の候補者相手に厳しい戦いを強いられるのが、今の選挙制度の現実である。時間を問わず、欲しい情報が探せ、コストもかからないインターネットの利用制限の見直しは喫緊の課題だ。
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