<20時早々の当確>
北九州市戸畑区、若松区、八幡西区、八幡東区を抱える福岡9区では、自民元職の三原朝彦氏(65)が民主党の前職緒方林太郎氏(39)を破って返り咲きを果たした。
20時の開票開始後早々に当確が打たれた三原氏陣営であったが、選挙戦の手ごたえは必ずしも十分とはいえなかったようだ。あるスタッフは、「有権者に熱気のようなものを感じなかった」とコメント。出口調査による当選濃厚との情報を耳にしても、「蓋を開けるまで分からない」とやや不安げな様子を見せた。
ただ、3年前の総選挙よりも有権者の期待を感じていたのは確かだ。三原氏の親族だという女性は、「3年前は、企業回りをしても返ってくるのは冷めた反応ばかり。黒崎駅でビラを配っても誰も受け取ってくれず涙が出ました。その点、今回は皆さんの後押しを間違いなく感じました」と、取り巻く状況の変化を口にした。
<北九州市から国へ至るパイプ>
当選の挨拶にたった三原氏は、記者の「三原議員」との呼びかけに笑みを浮かべ「議員と呼ばれるのは久しぶり」とおどけて会場の笑いを誘ったあと、有権者への感謝とスタッフへの労いの言葉を綴った。また、安部総裁率いる党執行部を支える決意に加え、重要課題として北九州市の経済再興に取り組む意向を明らかにした。
その後、挨拶に立った選対幹部は、「三原議員の当選で市と県、そして国とのパイプが繋がった」とコメント。地元では「城代家老として三原氏を支える」とともに、「三原先生には東京で精一杯頑張ってもらいたい」との激励の言葉が飛んだ。
<勝ってなお危機感を訴える>
喜びに沸く選挙事務所であったが、印象的な場面は最後に訪れた。再びマイクを握った三原氏が、前回敗れた経緯とその後の3年3カ月間を振り返り、搾り出すように「おごってはならない」と繰り返し訴えたのだ。「勝って謙虚に」は政治家の常套句だが、ここまで「バカマジメ」に語る当選者も珍しい。55年間続いた自民党の隆盛と、有権者から完全にそっぽを向かれた苦い経験。政局よりも理念に殉じるがあまり、自身も選挙では常に苦戦を強いられてきた。前回の民主党大勝と今回の自民党大勝を重ね合わせ、はやくも危機感を露にする三原氏の言葉に、長年の支持者たちも思うところがあったのか、会場は一時水を打ったように静まり返った。
全体を見回せば、今回の投票率の低さには、有権者の厭世観が滲んでいるように思われる。新たに政権を担う自民・公明の与党各党には、かかる危機感を共有し、厭世観を払拭するだけの政権運営を望んでやまない。
大家敏志参議院議員(自民党)のコメント
三原先生のご当選を、とてもうれしく思っています。これだけ多くの有権者の御支持を頂いて、国政への布陣も整いました。ですが、数はあくまでも手段にすぎませんし、3年前の逆バネが働いた面もあると思います。大切なのはここから「何を為すか」であり、経済の再生をはじめとして我が国のあるべき姿を取り戻すために、衆参が共に手を携えて国政にあたっていきたいと考えています。
今回の勝利をもってしても、参議院において我が党の議席が民主党より少ない状況は変わりません。選挙という意味では来年夏までが一つの勝負です。繰り返しになりますが、「為すべきこと」に真剣に取り組むことで、参議院でも議席を奪還して参ります。
【2012衆院選・福岡9区 開票結果】
・共産党・新人 真島 省三 氏(49) 2万2,109票
・日本維新の会・新人 荒木 学 氏(47) 3万93票
・自民党・元職 三原 朝彦 氏(65) 9万7,419票 当選
・民主党・前職 緒方 林太郎 氏(39)6万2,186票
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