<中国機が初の領空侵犯>
12月13日午前11時頃、中国国家海洋局所属の航空機(Y12)1機が沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領空を侵犯した。防衛省によると、中国機による日本への領空侵犯は、統計がある昭和33年以来初めてだ。あわせて13日には、同局所属の海洋監視船4隻が日本の領海に侵入した。
日本政府が9月11日に尖閣諸島を国有化後、連日、海洋監視船が日本の接続水域や領海に侵入を繰り返していたが、ついに海だけでなく、空からも日本の領域を脅かす行動に出てきた。領空侵犯も今回だけでなく、今後は頻繁に繰り返されることが予想される。
藤村修官房長官は中国機の領空侵犯を受けて、「日中両国で不測の事態を生じさせることは双方の国民の利益にならない。わが国はいかなる状況でも冷静に対応する方針だ」と述べ、中国側の自制を求めた。
しかし、11月開催された第18回中国共産党大会で、胡錦濤国家主席が海洋権益を守る姿勢を訴え、尖閣諸島をめぐり対立する日本を強く牽制したことを考えれば、藤村官房長官の「冷静に対応する方針」という弱腰の姿勢(発言)では、中国の違法行動を止めさせることはできないだろう。
<中国の意図を見極めよ>
中国の国際情報紙「環球時報」は14日付の社説で、今回の中国機による日本の領空侵犯について「海空両面からの巡航の常態化に向けたスタート」と主張した。日本がF15戦闘機を緊急発進させたことに「中国にも同様の権利がある」と、戦闘機発進も辞さない姿勢をあらわにした。
また、楊潔篪外相は14日、習近平指導部の外交方針に関する論文を人民日報(電子版)に掲載し、日本政府による尖閣国有化に対して「断固として日本と闘争を行なう」と表明した。このまま日本が何も具体的な対抗策を講じなければ、尖閣諸島が中国の手に落ちるのも時間の問題かもしれない。
<尖閣防衛の態勢整備を急げ>
日本政府は不測の事態に備えて、領域警備を強化する法整備を急くべきだ。与那国島だけでなく、尖閣諸島、宮古島、石垣島にも陸上自衛隊の常駐を行ない、尖閣諸島から約200キロしか離れていない下地島にある3,000メートルの滑走路を持つ空港を自衛隊機が使用できるようにする必要がある。
尖閣有事に対応できる防衛態勢を早急に整備しなければ、中国の攻勢から尖閣諸島を守り抜くことはできないのである。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第3版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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