安倍総裁は、16日に投開票された衆院選挙結果を「自民党に信頼が戻ったというより、３年間の民主党政治の混乱への国民の声だ」と受け止め、「かつての自民党と変わったのか、これから国民の厳しいチェックがある」と語った。
　福岡県内の小選挙区で当選した自民党候補の選挙事務所で、支援した地方議員は「自民党が反省した結果だ。３年半前までの自民党が悪すぎた。その反省があったから有権者が自民党に期待した」と勝因を分析した。
　「悪すぎた」との反省が述べられる2009年当時の日本はどうだったのか。「貧困と格差」が覆い、民主党は「国民の生活が第一」と掲げた。日本の経済・政治・社会システムは、高度経済成長時代やバブル時代とは違ったかたちで成長でき、持続可能にする新たなモデルの構築が迫られていた。しかし、まだその答えは示されていない。

＜２大政党制が機能しなくなった＞
　今回の衆院選挙でも、政権交代可能な選挙をめざした小選挙区制度の威力が前回に続き大いに発揮された。福岡県内11の小選挙区で、民主党は全滅し、第３極も議席を得られなかった。しかし、民主党と第３極（日本維新の会、みんなの党、日本未来の党）の候補者の得票は合計すると、４つの選挙区で、自民党候補を上回っている。「４割の得票で６割の議席」と言われるように、比較第１党が圧勝するのは、小選挙区制の特徴だ。中選挙区時代に存在した多くの中道政党が２大政党に収斂していった背景の１つにも、小選挙区の特性があげられる。

　ところが、３年前の政権交代選挙で産声を上げた「第３極」には、その後もいくつもの政党が誕生し、今回の衆院選は12政党が争うに至った。小選挙区制度導入当時目論んだ２大政党制が機能しなくなり、新たな経済・社会システムを示す批判勢力の存在が必要になったからだ。

　政権交代を繰り返すことによって、民意に応じて政策を修正する機能が「売り物」のはずだった。しかし、民主党政権の３年余りは、当初こそ、子ども手当てや公立高校授業料無償化など、「新自由主義」路線を修正する政策を実現したものの、「国民の生活が第一」と掲げた原点はかすみ、常に「大連立」のカゲがつきまとった。「原発ゼロ」は閣議決定から見送られ、民主・自民・公明の「翼賛体制」による消費税増税に行き着いた。民意ではなく、「原子力ムラ」や官僚のいいなりになるのでは、政権交代の意味はない。

＜新たな経済・社会システムを示せ＞
　新たな経済・社会システムを手探りしている時代には、みんなの党が掲げる「アジェンダ」方式のように、政策ごとに連立して、一つ一つ政策の実効性と国民の支持を確かめながら新たなシステムをつくりあげていく方法がベターだ。そのためには、小選挙区制度の見直しも不可欠だ。「変わった自民党」の政策が一時的なカンフル剤に終わってはならない。

　自民・公明の両党で320議席以上という圧倒的多数議席を手にしたが、日本維新の会の５４議席、みんなの党の18議席はけっして小さな議席数ではない。
　首相に返り咲く安倍総裁には、「国民の厳しいチェック」を忘れないでほしい。有権者は「白紙委任状」を与えたわけではない。戦後最低の投票率もそのことを物語っている。

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