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大さんのシニア・リポート~第7回 (超)高層集合住宅の見守りと行政の意識(前)
社会
2012年12月20日 16:12

 戸外からの目視による「集合住宅の見守り」は、5階建ての中・低層集合住宅までが限界とされている。それ以上の高層・超高層集合住宅では目視での見守りは不可能。1階にある郵便受けやガス・水道検針時の異常(数値)さで判断するしか方法がない。私が主宰する「幸福亭」(高齢者の居場所)では、「ハッピー安心ネット」(高齢者相互見守り)を実施。金をかけず、実効性のある方法として注目を浴びている。

sora_7.jpg 前回は孤独死の歴史と、それに真摯に向かい合う千葉県松戸市常盤平団地の様子を報告した。また、一般の中古マンションでも、資産価値が下がるという理由で、孤独死を隠して販売すると、逆に資産価値を下げる要因となることにも言及した。
 マンションの管理組合自体が建物のメンテナンスや管理、維持費などの徴収という仕事(ハード面)以外に、高齢(独居)者や高齢夫婦などの家庭をさりげなく見守ることで、中古マンションを購入しようとする人に「高齢者に優しいマンション」というイメージ(ソフト面)を植え付ける。そうすることが結果としてマンション自体の資産価値を高めることにつながると報告した。そのなかに「孤独死情報の開示」も含まれることになる。

 しかし、集合住宅に住む人たちは様々な考えを持つ人たちの集合体である。なかには、見守られることを拒否する住民も少なくない。当然である。「ハッピー安心ネット」はそれも解決した。
 答えは簡単だ。「見守られたい」と思う集合住宅の住民だけが手を挙げる。つまり、「ハッピー安心ネット」のコンセプトは「希望者のみ」。だから「見守られたくない」「見守られることに抵抗を感じる」という住民には参加資格がないことになる。

 加えてこのシステムは参加者間の「相互見守り」が基本となる。責任者(チーフ)は存在するものの、参加者の誰に電話を入れてもいい。ただし、女性から男性会員への連絡の場合、連絡を受けた男性はもう1人の女性を伴って彼女の部屋に行くのが基本。しかし、緊急を要すると判断した場合にはこの限りではない。
 まず、「身体に異常を感じたらチームの誰かに連絡する」→「電話を受けた仲間が現場に急行」→「症状に応じて対応。救急車を呼ぶことも」→「救急隊到着」→「救急隊員に症状を説明」→「搬送」→「本人帰宅までその場で待機」→「(事前に承諾があれば)身内などに連絡」→「本人帰宅」→「落ち着くまで話し相手に」→「症状と就寝を確認して帰宅」→「チームの責任者に連絡」。これが大まかな流れである。

 このシステムだと、集合住宅の階数にかかわらず連絡が可能になる。実は2年ほど前にこのシステムでひとりの高齢住民を死の淵から救出している。救出したのは私である。彼の鍵を預かる間柄だった。連絡を受け、開錠してなかに入ると、顔面蒼白の彼がいた。口から泡を吹いたような状況だったものの、話はできた。救急車を呼び、救急隊員が到着した時には話せる状態ではなく、病状を私が説明した。発見が早かったこともあり、命に別状はなかったものの、発見が遅かったら危なかったと思う。
 その後、彼は仲間との齟齬が原因でこのシステムから抜けた。同時に鍵の返還を求められ、返却。その1年後、心疾患で救急病院に搬送され、亡くなっている。もし、依然として友好な関係が続いていたなら、彼は再び生還できたと確信している。残念でならない。

(つづく)
【大山 眞人】

≪ (6・後) | (7・後) ≫

<プロフィール>
ooyamasi_p.jpg大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。


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