＜商店のように地域に根差すために＞
　同社は、防水工事で技術を磨いてきた笠社長が独立開業した会社である。独立後、すぐに壁にぶち当たった。営業を重ねたが、なかなか成果が上がらない。初年度の売上はなんと60万円だったという。
　「家族の協力があったから、仕事を続けることができました。食費を削ったり、生活費を節約してくれたりして、必死になって私を支えてくれました。その経験で私は、家族や周りの方々の大切さを改めて思い知ったのです。それが現在の私、会社の理念を見出したと思います。その後、５年ほど前から、太陽光パネルの販売・施工を開始しました。当初は、社の財務状態や業歴など足りないものばかりで、クレジットの加盟店契約すらも整備できない状態でした。そういう苦難の間でも、お金は後から付いてくると信じて仕事を重ねてきました。厳しい時期の経験があるからこそ、今があると思います。そして、そこから脱せられたのも理念が揺るがなかったからだと思っております」（笠社長）。

　太陽光パネルを取り扱う業者のなかには、詐欺まがいの営業をするところがあるという。売りっぱなしでアフターフォローなどはお構いなし。そんな企業との差別化を図るために、同社は逃げないことで信頼獲得に努めている。まず、営業エリアの拠点を本社のある糸島市にした。何かあったら即座にお客さまが駆け込んで来る距離に自らを縛ったのである。同時に悪評が広がったら誰も相手にしてくれなくなるエリアでもあるため、リスクを自らに課したことになる。かつて街角で見かけたタバコ屋のように、地域との同化にこそ社の存続を賭けたのだ。
　「売りっぱなしでよければ、悪評が広まる頃に次のエリアに移動すればいいので、おそらく気は楽かもしれません。私たちは狭いエリアで顔と顔を突き合わせて商売をさせていただいております。自宅も糸島市にあります。私や社員がおかしなことをしようものなら、仕事はおろか、住むこともままならなくなります。正直にまじめに仕事を積み重ねることでしか、我が社は存続し得ないのです。地元にこだわり、地元に根差した商売こそが私の理念に則していますので、これからもこのスタイルは変えるつもりはありません」（笠社長）。
　笠社長は、地域の役員や社会貢献活動に積極的に参加している。そういったつながりで絆が生まれ、幸せの連鎖が実現できるのだ。同社は太陽光パネルを通じて、より多くの人を幸せにすることを生業としているようだ。

　「人の幸せを心から願えば、自分も幸せになれます。そしてお金は必ず後から付いてきます。信念を曲げずに心と心の商売を続けていきたいと思います」（笠社長）。
　インターネットの時代、顔の見えにくい商売が隆盛を極めている。そんな時代に人と人、心と心の通う商売を目指す同社からは、学ぶべき点が多い。この思想が広がれば、世の中はより良いものになるのかもしれない。

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＜COMPANY INFORMATION＞
■（株）九州住建
代　表：笠　俊治
所在地：福岡県糸島市前原東1-6-3 双栄ビル1F
設　立：2002年５月
資本金：1,000万円
ＴＥＬ：092-332-1231
ＵＲＬ：http://q-j-k.sakura.ne.jp/

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