NET-IBでは、SNSやブログで情報発信を行なっている、佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏のブログを紹介する。
今回は、横山秀夫氏の64(ロクヨン)の読後の感想を掲載している。 12月24日午後11時58分のブログは以下の通り。
【レビュー】64(ロクヨン)
横山秀夫の64。話題のベストセラー。文春ミステリーなどでダントツのトップ。
やっぱり、本は多くの皆さんが支持するのは、外れが少ない。そう思って読んだら、今年断トツのナンバーワンのミステリー。横山さんの小説は大体読んでいるけど、文句なくトップ。
話そのものは警察小説でよくある、キャリアとノンキャリ、刑事部と警務部、上司と部下、夫と妻、家庭と世間という二項対立なんだけど、まず、これが際だって面白い。筆者の取材力には舌を巻く。また、今はやりのリーダーシップ論、組織論を読むより、こちらのほうが遙かに現実に即しているので役に立つ。主人公三上は不完全だけど一本気の魅力を放つ。
そして、この本の魅力は、読者が三上の気持ちになったり、あるいは、ずっと頭上から俯瞰できたりと、そして、主人公や脇役の思い違いも一緒に体感できるなど、視点がどんどん変わっていくので飽きない。
それよりも僕が唸ったのは、この手の小説は、様々な伏線が最後の一点でフォーカスしてスパークするものが多い。アガサ・クリスティーを始めとする古典は大体そうだし、ミレニアムもそうだった。だが、これらのタイプは、溜飲が下がったり、爽快感があるかもしれないけど、所詮作り物だな、デフォルメされているようなっていう感じになりやすい。
しかし、この64伏線の一つが、伏流のまま、流れていく。その結果、ミステリーとしては見方によっては不完全かもしれないが、小説としては、あるいはルポとして、超一流の出来映えになる。それほど自然なんですね。こういう手があるのか、という意味では、この64は、ルポ的な警察小説と昇華している気がするんだけど。
ともあれ、年末年始、ミステリー好きな、警察好きな皆さん、読んで損はない、得する小説です。
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