2012年を振り返ると、日中間の話題がこれほど世間を賑わせた年は、ここ数年なかったのではないか。アジアをターゲットにビジネスを展開するごく限られた人たちのみならず、世間一般の人までも中国の「驚異」について知ることになった一年だと思う。
<「海外に出ないリスク」を考えるべき!?>
GDPで日本を抜き去り、世界第2位になった中国。一昨年あたりから、ことあるごとに日本に旅行に来た中国人が大盤振る舞いの買い物をしている風景がテレビなどのメディアを通して報じられ、2012年に入ると、さらに加速。博多港には大型クルーズ船が毎週のように入港し、今年の入港は120回を数えた。福岡市のデータによると、中国人が1回の旅行で使う金額は約4.4万円。消費低迷にあえぐ九州の観光地にとって、中国人観光客はありがたい存在だった。
日本経済の元気のなさに見切りをつけ、アジア進出を目論む中小企業は相変わらず多かった。九州でも地の利を生かしての「中国進出セミナー」は大盛況で、宝の山を見つけるべく、中小企業経営者が多数参加していた。日中国交正常化40周年という節目に、日本の景気浮揚は中国にかかっているとさえ思ってしまった。あるセミナー講師は「(海外へ)出るリスクより、出ないリスクを考えないといけない時代になった」と話したのが印象的だった。
<尖閣問題で浮上したカントリーリスク>
9月の尖閣諸島国有化問題で事態は一変した。各地で反日デモが起き、日本製品の不買運動が起こった。これまで聖域とされてきたパナソニックまでもが焼き討ちや暴動の被害にあった。反日デモに乗じて暴れる中国国民に、世界は冷ややかな視線を送った。世界第2位の経済発展のスピードに、国民の民度がついて来られていないのが中国の最大の特徴だ。経済成長率は2桁近い伸びを見せているものの、国内では依然として進むインフレ、都市部への人口の集中など、経済の盛り上がりよりも懸念材料の方が際立ってきていた。中国国民の怒りの矛先が、中央政府に向いていることは、マスメディアを通しても透けて見えている。
福岡市で行なわれたあるセミナーで、地場の中小企業経営者が「反日デモのおかげで、中国での仕事がぱったりと止まった」と、嘆いていた。現在もビジネス再開のめどは全く立っていないという。一方で、現地で店舗を構える日本人経営者は「反日デモの影響があったのは2週間程度。高品質の日本製品を買わないでいられるわけがない」と話し、現在は、富裕層を中心に、これまでと変わらない水準にまで売り上げを戻しているという。ただ、その経営者は、回収のスパンはたった2年だとし、それ以上伸ばすのは危険だという。「今回の件で、チャイナカントリーリスクが浮き彫りになったので、この店でさっさと回収したら、他のエリアに力を入れるつもりだ」と、話した。
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