<可能性を秘めている「中国以外のアジア」>
最近になって、中国以外のアジア各国への進出セミナーが賑わってきているという話を耳にした。今回の反日デモを機に、「中国離れ」が進む可能性が出てきた。アメリカ政府はこの秋、これまで36カ国・地域だった「ビザ免除国」のリストに台湾を加えた。中国はもちろんこのリストには入っていない。華僑系メディアの「大紀元」の記事によると、台湾のパスポートでは120数カ所の外国にノービザで行けるのに対し、中国のパスポートでは40カ所程度にとどまるという。インターネットユーザーからは、台湾をうらやむ声、アメリカ政府を批判する声、自戒の念を抱く声をあげているようだが、これに対し、識者は「この待遇を不満に思っている中国国民は、自らが直面する境遇への無力感の表れ」だと厳しい解釈を示している。
習近平新体制は「中華民族の復興」を掲げていて、一党独裁を堅持する保守姿勢を貫き通そうとしているのは明らかだ。中国国民の不満をそらす目的だけのために、民族主義を高める政治手法は危険ともとれる。自国民を鼓舞させて、他国に対して刃を向けていては、今回のアメリカ政府の事例のように、「中国を避けて通る」といった事案が今後ますます出てくる可能性がある。海外依存度の高い中国の経済が、世界から「仲間外れ」にされるようなことになれば、中国国内の経済はかなりのダメージを受けるだろう。ゆえに、2013年は、中国以外のアジア諸国にラブコールを送る動きが加速しそうだ。
日本でも政権が変わった。外交面では、何もできなかったどころか、中韓との関係を冷え込ませた前政権からすれば、否応なしに期待をせざるを得ない状況だが、これ以上関係が悪くなることはないのではないか。中国も韓国も日本を必要としているし、日本にとっても両国とは切っても切れない関係だ。ただ、日本がアジアのリーダーシップをとっていくには、経済浮揚は欠かせない。いずれにせよ、地場の中小企業が、外交の大きなうねりに巻き込まれないよう、新政権には期待したいものである。
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